幸村発見!
「あ、幸村はっけーん」
渡り廊下で、幸村の姿を発見。ジャージ姿だから、もしかしたら今から部活に向かうところだったのかもしれない。まあ、私もテニス部のマネージャーだから一通りレギュラーに声掛けたら部活に行くんだけども。声を掛けて見れば、こちらを見た途端にこりと微笑む。
「やあ、随分可愛らしい魔女だね?」
「んふふ、でしょ。で、幸村。『Trick or treat?』」
この日だけ通用する魔法の言葉を口にすれば、ちょっと待って、と幸村がジャージのポケットを探る。そして幸村のジャージから出てきた物を見て、嬉しくて笑みがこぼれる。
「はい、これでいいかな」
「マカロンだ!うわー、しかもちゃんとハロウィン仕様だよ。オレンジでしょ、紫…あ、黒もある」
包装は透明な袋だったから、中の色が直ぐに分かる。袋の外からマカロンの色を確認する。どんな味だろうか。幸村がくれたものだ、きっと美味しいのだろう。今まで幸村にもらったお菓子はどれも美味しかったから。
「ありがとね」
「君みたいに可愛い魔女にだったら悪戯されてもいいかもしれないと思ったんだけどね」
さらりと恥ずかしげもなくそんなセリフを吐かれて、思わずこちらが赤面してしまう。幸村は、こういうところが好きになれないのだ。
「じゃあ私他のレギュラーも探さなきゃいけないから!」
また後でね!と付け加えて、早々に幸村の前から退散する。ああ、何だか恥ずかしい!
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