どうやら参謀は丸井を飼いならしたらしい。
昼休み前から丸井の視線が俺に向けられたままだ。
その視線に気付いて、俺はこっそりと机の下でケータイを弄る。
ディスプレイに表示されているのは、メール作成画面。
念のためとみょうじとアドレス交換をしていたが、まさかこんなことで最初にメールを送ることになるとは思ってもいなかった。
メールを送ってから1分ほどで返信がくる。
その内容に心で安堵の溜め息をつく。
鐘の音が響いたのを聞き取った教師が授業を終えて教室を出る。
その後を追うように教室を出て、いつも向かっている場所へと足を向ける。
廊下を曲がって、隠れるように身体を壁に預けて数秒。
パタパタと近付いてきた足音。

「人の跡をつけるとはまた悪趣味じゃのう、ブンちゃん?」
「うお!いたのかよぃ」

ちらりと見えた目立つ赤に口を開けば、ソイツはびくりと身体を揺らして立ち止まった。
壁に預けた身体を起こせば、丸井の笑みが僅かに歪む。

「大方参謀にでも言われたんじゃろ」
「まあそれもあっけどよ。仁王が何してんのか気になったのは事実だし」

バツが悪そうに小さく笑って頭を掻く丸井に溜め息。

「別に何もなか。ただ屋上でメシ食っとっただけじゃよ」
「あっそ。つまんねーの」

あっさりと納得してくれた単純な丸井に今日ばかりは感謝だ。
丸井はあまり深く聞いてくることはない。
興味を失くせばあっさりと引き下がるような人間だ。
とりあえず、つかの間ではあろうが安心を得られた。
参謀はいつになれば諦めるであろうか。
それを考えると、溜め息が漏れた。


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