「…本当に来たの」
「『来ればいい』ちゅーたのは何処の誰だったかのう?」

翌日の昼休み。
俺がふらりと向かった先は、昨日彼女が言った場所。
1号館屋上。
みょうじサンが昨日言った言葉は、図星だった。
最近の俺は人を馬鹿にして見下して、それを楽しんでばかりだった。
テニスも楽しくはあるが、テニスをしている時だけ、もしくはテニスでの策を練る時だけだ。
それ以外の時間は俺にとっては退屈でしかない。
だから、興味があった。
ならば彼女はどこまで俺を楽しませられるのか。

「私だね。さて、仁王雅治は大人しく手品のトリックに掛かるか否か」
「ほー、俺の為だけに『クラウン』はショーをしてくれるんか?」

ニヤリと笑ってそう言えば、俺の言葉を予想していたのか特に変わった様子もなく何処からか紙コップをとりだしてきた。
屋上のコンクリートの上ではやりにくいのか、持ってきていたのだろう板を俺とみょうじサンの間に敷く。

「別に仁王雅治のためじゃないけど。ただの練習」

板の上に紙コップが3つ並ぶ。
そして、くるりと捻った拳の中から出てきた黒いダイスが一つ。

「仕掛けがないかチェックして」
「ん?おぉ」

三つ並んだ紙コップを一つ一つひっくり返す。
ダイスも手の上で転がしてみるが、特に変なところもない。
板にも特に怪しい切れ込みがあるわけでもない。

「ま、簡単なのから」

彼女はそう言って、逆さまに三つ並んだ紙コップの真ん中にダイスを入れる。
それが、何度かシャッフルされる。

「さあ、ダイスは三つの紙コップのうちどれに入っているでしょうか」

ダイスが入ったはずの紙コップは、数回シャッフルされて左に移動していた。
けれどこういう場合は何処か別の紙コップにダイスが移動している、というのがオチだ。
けれどこれは最初の一回だ、素直に答えてもいいかもしれない。

「ま、普通は左じゃろ」
「素直にきたね」

アンタの事だから別なところを選ぶと思ってたんだけど、と言って左の紙コップに手を伸ばす。
カタンという微かな音を立てて倒れた紙コップの中に、黒いダイスは見当たらなかった。

「残り二つ。さてどっち?」
「んじゃ右」

こうなればあとは勘に頼るほか無いだろう。
結局それもハズレるのだけれど。

「悔しかったら当ててごらん」
「みょうじサンのその挑発するような態度が気に入らんのう」

ひくりと口元が歪む。
こうなれば意地でも当ててやろうではないか。


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