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そろりと目を開けると、目の前には焦ったような表情の仁王君。

「薫サン?!」
「まさ、はる君?」

呼ぶと、ほっとしたように息を吐いて顔を伏せる。
そして聞こえた、良かったという小さな声。
すぐ近くに、止まった大型トラック。仁王君の少し後ろに、運転手だろう作業着姿の男の人の姿があった。

「怪我とかなか?頭大丈夫?」
「…怪我…は、まあ、ちょっと手擦り剥いたのと。あと、頭。後ろの方痛いかな」

そう言いながら、ゆっくりと体を起き上がらせる。
突き飛ばされたときに背中をぶつけたのだろうか、痛みが走って顔を歪めた。

「……下手すりゃ殺人未遂やぞ…あの女、」
「ちょ、え、そんな物騒な」

低い声でぼそりと呟くその内容に、慌ててストップをかける。

「事実そうじゃろ、後ろ車道なん分かってて突き飛ばしてんじゃけ」

多分、彼女は驚きと怒りで周りが見えなくなってしまっただけなんだと思う。
それだけ、彼女は仁王君が好きなのだろう。
だから私に仁王君を騙したと詰め寄った。

「おー、大丈夫か?」
どこか暢気な声を掛けられて、顔を上げるとそこには先ほど視界に見とめた運転手さん。

「あ、ごめんなさい!ご迷惑おかけしました」
「心臓止まるかと思ったけどな!ま、大きな怪我ないみたいで良かったな。荷物は轢いちまったけど」

ほれ、と手渡された荷物はぶつかったせいで飛ばされたのだろう。
カバンの側面が擦れて大きく汚れていた。
というか、運転手さんが良い人でよかった。
慌てて車道から出ると、トラックに戻った運転手さんは気ーつけろよーという言葉を残して走り去った。
歩道に取り残された私と仁王君は、しばし無言でトラックを見送って。

「…とりあえず、手当てしちゃる」

仁王君に案内されて、学校の中へと足を運んだ。




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