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「早いなー、とは思ったけどよー」
「ごめん」

翌日、学校の空き教室で。昨日と同じように佐藤君と二人。
佐藤君はため息をつきながら、頭を掻く。それに対して、私は俯くばかりだ。
だって、せっかく告白してくれたのに。その気持ちに応えられないというのは、少なからず申し訳なく思うから。

「んじゃさ、今日の放課後。俺に付き合ってよ。そしたら諦める」
「今日、ね。了解です」

冗談半分で敬礼してみせれば、佐藤君も同じように敬礼をして笑う。
佐藤君と居るのは楽しいけれど、やっぱり恋愛とは違うんだなと何処かで思う。
ただ、楽しいだけ。それだけ。自分から会いたいとか、そんな風には思えなかった。






 ***






「薫ー、今から遊び行かない?」

放課後、荷物を纏めていたときに掛けられたよっちゃんの声。
ぶっちゃけ、凄く魅力的なお誘いだ。この後に何もなければ即座にOK出してるんだけど。

「ごめん、今日はこれから用事がありましてぇー」
「えー、折角新しくできたカフェ行こうと思ってたのにー」

むーと口をとげるよっちゃんに謝ると、廊下から入ってきた一人の男子。

「垂水ー、行こーぜ」
「は?え、佐藤君?ナニ、薫?!」

よっちゃんの視線が、佐藤君と私の間を行ったりきたり。
え?え?と小さく声を上げて数秒。
やっと脳内で整理がついたらしい彼女が、私の両腕をガシッと掴んだ。
それから顔を寄せて、小声で。

「ちょ、薫!なに、佐藤君と付き合うっていうんじゃないわよね?あんた仁王君はどうなったのよ?!」
「何で雅治君が出てくるかはわかんないけど…告白はされたよ。でも、断った」

佐藤君の様子を窺えば、少し首を傾げながらも待ってくれている。

「は?!ちょっと、それマジ?!」
「うん。そしたら今日の放課後付き合ってくれれば諦めるっていうから」

そこまで説明して、やっと納得いったらしい。
呆れたようにため息をついて、額を手で覆った。

「あ、そ。それならいーわ。ただ、気をつけなさいよ?」
「ん?」

首を傾げれば、怖い顔をされた。
鼻先にビシッと指を突きつけて曰く。

「男は狼!気心知れてる仲だからって油断してると襲われるわよ?」
「…まっさかー」

笑ったら、頭を平手で叩かれる。
よっちゃんの背後に鬼が見えるのは気のせいだろうか…。

「だっからあんたは危なっかしいのよねー。くれぐれも気をつけること!」
「…はーい」

しぶしぶ頷けば、二度目のため息。
まったくもーとかぶつぶつ言いながら、荷物を持ち上げた。
空いた片手にはケータイ。なんか凄い速さでボタン打ってる。

「話終わったか?」
「あ、うん」

頷いてからよっちゃんに視線を向ければ、ジトッとした目で見られた。
曖昧に笑って手をひらりと振れば、三度目のため息。
よっちゃんは一体なにをそんなに心配しているのだろうか。




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