15
電話がきたらどうしよう。
ベッドの上に正座をして、正面にケータイを置いてにらめっこ。
よっちゃんが変なことを言い出すから、もう何を話していいのか分からなくなってきた。
ていうか、今まで一体どんなことを話していたっけ?
一人悶々と考えていたけれど全然分からない。
そんなことをしているうちに、着信を知らせる音楽が鳴る。
「もしもし」
『薫サン?』
慌ててケータイに手を伸ばして通話ボタンを押せば、聞こえてきたいつもの声。
ど、どうしよう。なんていえばいいんだろう。
「うん。こんばんは、雅治君」
『こんばんは。……』
挨拶の後に、沈黙。え、仁王君何で黙るの?
というか、沈黙が非常につらい。微妙に、気まずいような。
「…雅治くーん?」
『お、おぉ。…すまん、電話したんはええんじゃけど何話していいんか…』
どうやら仁王君も私と同じことになっているらしい。
それが少し面白くて、笑いがこぼれる。
「っふふ、」
『?何を笑っちょるん』
ちょっと拗ねたような口調。仁王君て、たまに可愛い。
「んー?同じこと考えてたんだなーって思ったらつい」
『薫サンも?』
暗に何で?と聞かれているようで。ちょっと迷ってから、話すことにする。
自意識過剰だと呆れられるような気もしなくもないけれど。
「うん。友達にね、仁王君と付き合ってんのかーって聞かれて。それで色々考えてたら、いつもどんな風に話してたのかわかんなくなっちゃった」
付き合っているのかという問いは否定したことも告げて。
そしたら仁王君は驚いたように声をあげた。
「…雅治君?」
『年上っちゅーても考えることは同じじゃのう。俺も同じことチームメイトに聞かれたぜよ』
その言葉に、今度は私が驚く番だ。
で、仁王君も私と同じパターンで会話に困ったと。
それがなぜか笑えてきて、こらえきれずに笑ってしまえば電話の向こうで仁王君も笑っているのが聞こえてきた。
『あ、でも』
ひとしきり笑った後に、仁王君が気づいたように言う。
ん?と聞き返せば。
『どーせじゃ、こん噂利用させてもらってもよか?』
「何に?」
首をかしげた。噂を利用するって、何に?
『ちょいとな。ま、悪いことに使うわけでもないけぇ安心しんしゃい』
「…そーゆーことを言われると逆に心配なんですけど…」
不安になりつつ言えば、小さな笑い声。
どうやら答えてくれるつもりは一切ないらしい。
もう、と怒ったような声を上げたらまあまあ、と宥められた。
『ま、お互い深く考えんでええんじゃなか?考えたところでなるようにしかならんじゃろ』
「そーだね。色々考えてたのが馬鹿みたい」
『そら薫サンじゃし』
くつくつと笑いながら言われた。
…どういう意味だ、こら。
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