06




「今日二回目だけど、おはよう仁王君、丸井君」

朝練が終わった仁王君と丸井君が教室に来た。
丸井君は普通に挨拶を返してくれた。

「…おはようさん」
「……あれ?」

仁王君も挨拶してくれたけど、違和感。
でも、周りは気付いてないのかいたって普通の反応。
私だけですか?

「……仁王君、ちょっといい?」

思わずグイグイ腕を引っ張って、あまり人の来ない一角まで来てしまった。
…途中何か言いたげな視線を向けられたけど、無視しました。

「いきなりなんじゃ、北河」
「間違ってたらゴメン。でもあえて聞くけど…誰?」

間違ってたら、本当に失礼だよね。
でも、間違ってないらしい。目の前に立つ仁王君が、少し驚いた顔してる。

「…どうして分かったんですか?」
「あ、やっぱり違う人ー。もしかして柳生君だったりする?」

丁寧なしゃべり方と落ち着いた声。テニス部のレギュラーだと考えると、柳生君しか考えられない。

「ええ、その通りです」
「わ、ビンゴ。声、少し違ったしね。似てたけど。何でまた仁王君の格好してるの?」

口ごもってるあたり、言っていいのか悩んでるみたいだ。
聞いちゃいけないことだったかな。

「おや、お二人とも何をしてらっしゃるんですか?」
「…におーくん、ごめん、ちょっと笑いたい」
「え?」

急に現れた柳生君に、ちょっと笑いが込み上げる。
いや、すごいそっくりなんだけど、分かってると面白い。

「仁王君、北河さんには通用しないようですよ。もうバレてしまいました」
「…柳生、早すぎじゃ」

仁王君の格好をした柳生君が、柳生君の格好をした仁王君に報告してる。
見かけはまんまなのに、口調と声が逆というだけで面白い。
堪え切れなくて、笑ってしまった。

「…ごめ、あー…。はは、面白いー…」

笑いを無理に抑えようとしたから、言葉が途切れる。
外面仁王君は困った顔、外面柳生君は不機嫌そうな顔をしてこっちを見てる。

「…で、何で?」
「今度の大会、ダブルスで出場するんですけど、そこで入れ替わり作戦でいこうという話に。今日はとりあえず一度入れ替わって、バレるかどうか試してたんですよ」
「…作戦立てたの、仁王君だよね」
「プリッ」

うん、仁王君だね。返事がよくわかんないのだったし。
それにしても、それをよく柳生君が承諾したよね。

「で、今日ずっと入れ替わったままなの?」
「とりあえず、誰かにバレるまではと言うことだったのですが…」
「朝一番で北河に見破られるとはのぉ。予想外じゃ」

ここは謝るべきところなのかな。どうなんだろう。

「…あれ、えーと…ごめんなさい?」

一応謝ってみた。そしたら二人に苦笑されました。

「北河さんが謝ることはないですよ」
「そーいうこと。柳生が未熟つーことじゃな」
「…多分仁王君でも分かったと思うよ?」

多分、だけど。そう言ったら、仁王君がニヤリと笑った。
え、何だその怪しい笑顔。

「ほー。じゃあ今度たまに北河に挑戦するとするか。のぉ柳生?」
「…そうですね」

挑戦状叩きつけられました。変なところで対抗心燃やさなくていいです。

「ま、とりあえず今日は北河以外のヤツにバレるまでっちゅーことで」
「わかりました。教室に戻りましょう、そろそろ先生方が来る頃ですし」

そこから教室に戻るまで、柳生君と仁王君はお互いに注意点を言い合っていた。
すぐ側で聞いてて笑わなかった私は偉いと思います。凄い笑いたかった。




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