03




「おっはよ、葵。具合ど?昨日もまたぶっ倒れてたみたいだけど」
「あ、よっちゃんオハヨー。今日は全然おっけ」

翌日学校に行ってみれば、昨日私が倒れたことを心配した友達が声をかけてくれた。

「夢見た?」

机にノートやら筆記具を入れていたら、よっちゃんが目を輝かせて聞いてきた。
うん、と素直に頷けばどんなだった?という質問。
よっちゃんは私が倒れた時は必ずあの夢をみるということを知っている唯一の友達だ。
倒れた翌日には、必ずその夢の内容を聞いてくる。

「どんなだった?」
「珍しくね、知ってるところだったよ」

私の言葉に、よっちゃんはへぇ?と興味を持ったようだった。
机に手を突いて身を乗り出してきた。

「何処?」
「ガッコ。校長室とかも見れたなあ」

あの夢では全ての教室を制覇しようとしていたから、普段入れないところも見たりできた。
随分想像力豊かだと思うほど、それはリアルだった。
それをよっちゃんに説明しているうちに、夢の最後の出来事を思い出して言葉が途切れた。

「葵?どしたー?」
「そういえばね、初めてなんだよ」
「何が?」

私の言葉によっちゃんが首を傾げる。

「夢の中で、人に話しかけられたの」

首を傾げていたよっちゃんは、今度は目を丸くした。
あの夢の内容をずっとよっちゃんに話しているけれど、そのよっちゃんも驚いている。
事実、本人である私が驚くのだから彼女が驚くのも当然と言えば当然なのだけれど。

「え、何ソレ。今までそんなこと無かったでしょ」
「うん、だから私も驚いたんだよねえ」
「どんな人だったか、覚えてる?」

友人の問いに、昨日の夢を脳裏で再生する。
覚えていないはずが無い。
それに、とても特徴的なあの男子生徒をどうして忘れることがあるだろう。

「白、というより…銀色かなあ、あの髪の色」
「はぁ?!」

凄い綺麗な色だったなあとぼんやり思っていたら、よっちゃんは口元に手を当てて考え込んでる様子。
それが不思議で首を傾げたら、視線を上げたよっちゃんに両肩を掴まれた。

「ねえ、一応確認だけど。ソイツ、口元に黒子なかった?」
「え、よっちゃん何で知ってんの?」

端正な顔立ちな上に、色気を醸し出すような口元の黒子。
それに、一番目を引いたのは髪の色。
誰もが目を奪われるような、綺麗な銀色だった。

「葵、あんた『仁王雅治』って知ってる?」
「あ、そういやその人もそう名乗ってたっけ」

お互い名乗りあったことを思い出す。
よっちゃんの表情が引き攣る。
どうかしたのだろうか。

「仁王君がどうかしたんですか?」
「あ、柳生君おはよー」
「おはようございます、杉崎さん。具合はどうですか?」

隣からかけられた声に視線をそちらに向ければ、眼鏡をした物腰の柔らかなクラスメイト。
隣の席の柳生君だ。

「うん、今日は元気。あ、柳生君後で数学のノート見せてもらっていい?」
「私ので良ければどうぞ」

そこでよっちゃんとの会話は途切れたのだけれど、よっちゃんは自分の席に戻っても難しい顔をしたままだった。




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