09
仁王君ときちんと知り合って数日。
私と仁王君は、友達とも言えるくらいに仲が良くなっていた。
廊下ですれ違えば挨拶をするし、たまに教室に来ればお喋りだってする。
昼休みにばったりあったりすればそのまま一緒にお昼を食べたり。
ごく普通の、友達のような関係。
それがまさか、こうして疑われようとは思ってもみなかった。
「杉崎さん、仁王君と付き合ってるの?」
呼び出しとしてはポピュラーな場所、校舎裏にて。
仁王君のファンと思しき同級生5名が、壁際に立つ私をぐるりと囲むように立っている。
「付き合ってませんよー」
「嘘!」
否定すれば、それをさらに否定された。
しかも鋭い視線付きで。
何で否定されなきゃいけないんでしょうか。
「嘘って言われても、付き合ってないもんは付き合ってませんから」
「じゃあ何であんなに仁王君と仲が良いのよ!」
何で、と言われても。
「そりゃあ友達みたいなもんですから。ていうか私は一方的に仁王君とは友達だと思ってるんですけどね」
「ただの友達である貴女と仁王君があんなに仲が良くなれるはずが無いのに?!」
もーワケわからん。
彼女らは一体何が言いたいんだ。
「仁王君、彼女とでもあんなに仲良さそうにしてたこと無かった!」
「彼女でもないのに、仲良くなれるはずがないの!」
これはもう何を言っても通じなそうだ。
恋する乙女は面倒臭いなあ、と今しみじみ思う。
否定はしたのに聞く耳持たず。
後はもう知らない、どうにでもなれ。
「用はこれだけですか?私、今日は医者に行かなきゃいけないんでそろそろ失礼したいんですけど」
「話は終わってないわよ!」
するりと抜け出そうとしたところを、肩を掴まれて引き止められる。
困った、本当に今日は医者に行かなけりゃいけないのに。
診察時間終わっちゃうよ。
「私は終わりました。否定したじゃないですか」
「本当に彼女ではないというのなら、もう二度と仁王君には近付かないで」
彼女らの言うことが余りにも馬鹿馬鹿しくて笑ってしまう。
私が笑ったのを見て、彼女らの表情が強張るのが分かる。
「友達なのに、近付くなって?知りませんよ。貴方達の言うことを聞かなければいけないという義務があるわけでもなし。私はこれまで通り仁王君と接するだけです」
肩を掴む手を振り払って、さっさとその場を去る。
携帯電話で時間を確認すれば、思ったよりも時間が経過していて少し焦る。
間に合うだろうか。
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