07
そして放課後。
逃走を図ろうとしたものの、見事幸村と榎本に阻まれて現在に至る。
買い物というから何かと思えば。
「何ちゅー色気のない買い物じゃ」
「何か言った?」
今居る場所はショッピングセンターでもなければ、女子が好きそうな雑貨店でもない。
色気なんて、ホームセンターにあるはずがない。
「別に何でもなか。んで、どれ買うんじゃ」
榎本がしゃがみ込んで悩む、その前に並んでいるのは肥料。
本当に、何て色気の無い買い物だろう。
いくら園芸部だからといって、流石にこれはなくないか。
「んん、腐葉土にしとこうかな。仁王君、10キロいける?」
「は?」
ちょっと待て。
今なんつった。
何キロだって?
「おーい、仁王君?10キロ持てますー?」
「おっまえな、俺に10キロ持って歩けっちゅーんか」
10キロを持って歩くのは正直しんどい。
というか、嫌だ。
しかもデカイ。
何で学校帰りにそんなもん買おうと思うのか正直わからん。
「…嫌ならいーですよ」
とか言いながら何でカートにばっちり載せてるのだろう。
「私が持ってけばいいし。仁王君は液肥持って」
「…そうしたとして、嫌な視線向けられるの俺って分かっちょる?」
もしかして計算してるのだろうか。
そう思ったが、目をパチパチさせてからおぉ、とか言ってるあたり何も考えてなかったらしい。
そんな彼女に溜め息ひとつ。
「半分の5キロとかなら持っちゃる」
「あ、やった!」
素直に喜ぶ榎本に少し呆れながら、でもその笑顔は可愛いと。
そう思ったのは、きっと気のせいだ。
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