03
「幸村、お前さんのクラスに榎本佳奈っちゅーやつ居るか?」
部活の休憩時間に、何となく聞いてみた。
放課後はあんな格好をして草むしりとかしているけれど。
普段はどうなのだろうか、と興味があったから。
「え?榎本さん?何仁王、榎本さん知ってるんだ?」
「まーな」
詳しいことは何一つ言っていないにも関らず、幸村は1人納得したように頷いた。
え、読心術でも会得してんのか?
「仁王の事だから放課後に校舎裏で偶然会ったとか、そんなだろ?」
「…」
その通りすぎて何も言い返せない。
グッと沈黙したら、幸村が小さく笑った。
「榎本さん、ね。面白いよね、あの子」
「…面白いで済むんか?」
面白いの領域は超越したところにいると思う。
きっとそこは変、という領域だろう。
「うん。榎本さん、基本的に自分が興味あること以外は話聞いてないし」
「何じゃそら」
とか言いながらも何となく納得。
興味が無いから俺のことも知らない。
幸村はクラスメイトだから名前と顔は知っていても、何部なのかは知らない。
アイツはきっと、園芸のこと意外は興味がないのだろう。
「流石に授業はちゃんと聞いてるみたいだけど。俺とだってガーデニングの話しかしたことないし」
「幸村、お前さんそんなことアイツと話しちょるんか?」
まあ園芸にしか興味が無いのだったらそれ位しか話すことはないのだろう。
え、てことはあれか。
俺とは共通の話題がないってことか。
「まあ趣味だしね」
そう言って笑う幸村を見て。
心のどこかで、ちょっと羨ましいと思ったのは気のせいか。
「興味持つところがよく分からなくてね。平均的な女子とはちょっと違うところが楽しいよ」
「普通女子が興味持つんはお洒落とかじゃろ。あとはドラマだとかアイドルとか」
そういったことには興味がないと。
じゃあ一体何に興味を持つというのだろうか。
「テレビ見るの、って聞いたら教育テレビって言ってさ。何語?って感じの歌を急に歌いだしたんだよ」
あれは見てて楽しかったなあ、と。
本当に楽しそうに笑う。
教育テレビて。
んでもって歌うんか。
「今度じっくり話してみるといいよ」
にっこり笑って言う幸村は、一体何を考えているのか。
何か企んでいるようで、素直に頷くことはできなかった。
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