06
翌日、やはりというべきか隣の席に谷口さんの姿は無かった。あれだけの高熱だ、一日も休まずに治るはずがない。何気なく見ていたら、前の席に座るクラスメイトが後ろを振り向いて。
「谷口さん休みみたいだよね。幸村、寂しいんじゃね?」
からかう様な口調で、ニタリと笑う。それに小さく笑ってどうかな、と言葉を返す。
「寂しいだろ。毎日あんなに話してんじゃん。実は付き合ってたりすんの?」
「……まさか。寧ろ逆なんじゃないかな。俺のこと苦手って言ってるらしいし」
言って、目を伏せた。谷口さんは大丈夫だろうか。まさか熱がさらに上がってるなんてことはないだろうか。明日は、学校に来れるのだろうか。そんなことを考える。
「…幸村、お前」
「ん?」
ぽつりと前から聞こえてきた言葉に視線を上げると、驚いたような表情でこちらを見るクラスメイト。何か言いたげにこちらを見てるものの、何かを言うような気配は見られない。
「何?」
「、ああ。…いや、何でもねー」
訝しげに顔を顰めて聞けば、そう言って慌てて顔を背けた。何が彼は何が言いたかったのか。読心術が使えそうだと言われることは多々あるが、俺だって一応普通の人間だ。そんなものが使えるわけが無い。だから、彼が何を言いたかったのかは知る由も無い。
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