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つめたい空気

目を開けて少しだけ困惑した。裸体を丸める。

(どうして何も着てないんだっけ)



「…」
「おはよう」
「…おはよ」

そうだ「最初から」裸でしかなかった

ゆっくりと起き上がり伸びをして節々をほぐしていく ふり。


だって正面では彼が微笑んでいるから
もうそんなことする必要なんてないのにな、とは考えないようにしている




「よく眠れた?」
「たぶんね」
「そう、良かった」
「…ここ、少しだけ寒いんだよね。暖房って入る?」

「  寒い、の?」
「…?」

「あ あぁ勿論入る、入るよ。ちょっとまって」





いつの間にかクローゼットに入っていたヒーターを早速点火し、ありがとうと伝える

「…どう」
「まだ着けたばっかりだよ」
「そう だね」





「…?おっかしいなー」
「…ちょっと席を外すよ」
「うん」


いくら近づいてもダイヤルを回してもちっとも暖かくならないそれ。


(…また泣かしちゃったのかな)



ようやく寒さなんて感覚はとっくに棄てたんだった、と気が付いたのは扉が閉まった時だった。 しばらく彼は戻ってこないだろう。


幸せになれるなら、と決意してこうなった私たちなのに彼ばかり苦しんでいる気がする。 今すぐ彼の元へ飛んでいけない私なんてあの時そのまま死んでしまえば良かった、のに。

コンピューターとして目を覚ました私に迷いなんてなかった。人間だった頃みたいな衝突はもう起きない、彼の為だけに生きていこう、

なのに



「海馬くん」


日がたつにつれて私の言動は異常をきたし続けているようで、というけれど自分ではわからない。ただ彼の様子が変なのだ いつもかなしいめをしている


「海馬くん」


人が人間でなくなるときどんなことがおきたってやっぱり辿る道は一つ、しかないのだろうか。私が私を忘れても海馬くんをいとしいひとだとおぼえていたいとねがうのはりんねのせつりにはんしたことなのだろうか


「かいばくん」


世間は彼を狂っているというのだろうがそれはまぢがいだ。わたしがかいばくんからはれたくないから、彼はやさしいひとだからあまいひとだから




(求めればもとめるほど傷つけあってるなわたしたちって)













「…あ、あ、あ、あ」

内側から痺れるほどの寒気。凍りついたような身体が勝手に横倒しになるとしかいがくらんでどんつうがはしる

(さむい…さむいよ…)

コンピューターの故障か、私の天命か、どうなのかはわからない。だけどかくじつにからだはきえそうで、わたしがうすくひらたくなっていく どうしよう彼がまだかえってきてない 



 ガチャリ




「 い くん」




動けない恐怖に叫んだはずなのにこえがでない。うずくまっていたわたしはちからをふりしぼっておきあがり、すぐさまとんできた彼にもたれかかるようなかたちでがらすにみをよせた


「どうしたんだ!一体何が、」
かいばくん
「大丈夫だよナマエ、大丈夫、ボクが助ける。大丈夫、死なせない 大丈夫」

うでがふるえてうまくそうさできていない彼はうわごとのようにそうくりかえすばかりだ
わたしのへやはまるでゆきげしきのようにしろくかすんでいく



もう、いいよ

ねぇ もうやめよう わたしきえそうなの たぶんきえてしまう だから わたしのことみてほしい  こっち むいて


「ナマエしっかりするんだ!」
やめて
「君は俺が助けるよ。この前だってその前だってなんだってそうだったろ?」
おねがい
「原因はきっとプログラミングが甘かった所為だな、すぐに気が付いてやれなくてごめんね」
なかないで
「大丈夫、きっと上手くい「ねぇ





あなた






なかないで もうなかないでね。
いいたいこと たくさんあったのにいえなかったな。
わたしおわりまでどんくさいんだなあ ね わらって そんなかおしないで







ふしぎ がらすはつめたいのに あなたはこんなにもあたたかいんだね








(20091129)
(だれか)(彼をあたためて )




 
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