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ぬくぬくしていて私の好きな匂いがする、

思わずすりよったり暖かいから余計嬉しくなって手で撫でまわしたり、する。

私の瞼は下りたまま、今は布団の中だ。

いつも布団の中は体温であたためられているけれど今日はそれがすごくちょうど良い。
(いつもはあつすぎて剥いじゃって身体が冷えたりしちゃうんだよなー…)

うんうんとぼんやり考えながらすーっと息を吸い込む。やっぱりあったかいな、気持ち良いなぁ、すごい好きな匂いだ


それでもやっぱり寝起きは頭が重たい。
再び眠りにつこうと身を丸めたその時、


「おい」
「ん…?わっマ、リク!」
「なに驚いてんだ」
「だっだっ、だって…」

心臓が跳びはねる。一気に眠気なんて覚めてしまった。えっと、そうだ昨日の夜は一緒だったんだっけ

「…いつから起きてたの?」
「ナマエが俺の身体を触りまくってくる少し前くらいからかねぇ」
「いや、あのそれは…ちょっと違くって」

目が覚めて近くに暖かくて良い匂いのするものがあったから、ぬいぐるみみたいな感覚で撫でてて、自分は寝ぼけてたの!と、バレバレで苦しい言い訳をしてみる。
傍らマリクは終始にやにやしていて

「ククッ、スケベだねぇ」
「だから…!」

私は完全に寝ぼけてたんだってば
それだけは本当なの!

居たたまれなくなって布団から逃げ出そうとすると腕を掴まれ引き戻される


「いっ…!?」
「……」
「な、なに…?」
「俺にした事とおんなじことしてやるよ」
「へっ?…や、だっ」


そろそろとお尻を撫でられて鳥肌がたつ。
鎖骨にマリクのおでこが当てられ、頬に硬い髪がふれる。


「ナマエの手付きこんな感じだったかねぇ」
「やだ、離して…」
「俺はてっきり誘われてんのかと、」
「ま、さかマリクじゃあるまいし」
「…とかなんとか言って声引きつってんぜ」

お尻から背中にかけてするりと手は動く

この流れはまずい。非常にまずい。


そう頭ではわかっているのに私とマリクの身体は更にもぞもぞと絡みあう。
押し戻そうとするが私の腰にまわった手のほうがはるかに強くて力がぬける


「やめ、よ?朝からは嫌」
「何がだ?」
「…」
「何が、朝から嫌なんだぁ?」


どっちがスケベだばかやろう。そう言ってやりたかったのに下からすくう様にキスをされて頭の芯が溶けていく

その時、



…ブブ…ブブ…ブブ…





振動しはじめたのは私の携帯ではない。しばらく無視を決め込んでいたマリクだったが鳴りやまないそれに痺れをきらし私を離して手にとる


「……俺だ」

マリクの機嫌は最悪で、おそろしく低い声で電話にでる。
かけてきた人可哀想になぁと思いつつ布団から抜け出し服を着はじめる



「あ……はい、…いえ、知らねぇ、じゃなくて!知らないですね…。」

一瞬耳を疑った。あれ?マリクくんに変わった?だけど姿も声もマリクのままで、彼は今までに聞いた事もない言葉をつかっている。

そして何を思ったか目を見開いたまま固まっていた私に近づいてきて持っていた電話を突き付けてくる。

「わ、私?」
「はやくしろ…」
「え、あ、ちょっ………も、しもし?」

スピーカーから親の声が聞こえてくる。あ、昨日電池なくなっちゃってそのまま連絡するの忘れてたんだ…。

こっぴどく叱られるが正直それどころではない。背中に突き刺さる視線が恐ろしい。


ようやく電話を切るとマリクはまた布団に戻っていて、おそるおそる近づく

「…ごめんねー」
「…」
「機嫌治してくださーい」
「さいあくだ…」
「うん、そうだよねって、え?」
「とにかく今すぐ家に帰れ。」

いきなり起き上がり部屋をとびだし玄関まで腕を引っ張られる。
マリクの顔は赤くなったり青くなったりと苦々しくて


「お母さんがね、今度はお家に連れてきなさいって」
「合わす顔がねぇよ…」
「泊まるんだったら家に泊まんなさい。だってさ」
「冗談じゃねぇ!」


真っ赤になったマリクに抱きつくと勢いよく剥がされて玄関から閉め出された。






私の好きな匂いは好きな人の匂いだったんだなぁ。




(私のバッグ部屋に置きっぱなしー!)
(20091025)



 
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