zzz           . | ナノ









車で軽食をとり、午後の授業がはじまる5分前丁度に下駄箱にたどり着く

(…うるさい足音だな)

目前で止まったそれに故意に目を合わすことなく靴を履き代え横切ろうとすると腕を捕まれた



01






「 何か?」
「私に言うことがあるんじゃないの?」
「特に何も」
「どうしてサボったの?」
「急用を思い出したんだ」
「……嘘なんでしょ?」
「いいね」
「え?」
「昨日よりずっと良い顔してるよ」



「…悪趣味」
「それはボクの台詞だ。腕を離してくれないか」
「!だって、そうでもしなきゃ無視するつ「わからないかな、誰かに見られて誤解されたく無いんだ。」
「な、何言って「君にとっては良くてもボクは勘弁して欲しいんでね。」


眉がはね上がると同時に腕を突飛ばされた形で解放され、思わず睨む。
女は落胆したように小さく息をついた




「……もう、いい。他の人に変えてもらうよう先生に言う」
「…え?」
「もう何もしに行かないから、…安心していいよ。」












「待って、  今日行くよ」

「…へ?」

「行くよ、気が変わった。」
「ほ、ほんとに?」
「放課後、図書室、だろ?」
「…そうだけど」

「…もう行っていいかな、このままだと遅刻するんだけど」

「う、うん…じゃあ今度こそよろしくね?」
「ああ」













誰が行くか。


なんて単純な女だ
二度も騙されるやつがあるか?
後ろから聞こえる足音を気にして必死に抑えるが正直肩が震える位可笑しくて仕方がない、傑作だ、馬鹿だ、馬鹿め





〜〜〜


帰りの号令と共に教室の扉を出ようとすると、担任に呼び止められた。

「何ですか?」
「いやーすっかり返すのを忘れとったんだが、これから会議なんでちと無理なんだ。朝見たら今週はうちのクラスが担当なんだろう?当番ついでに返却してもらえんか」
「…すみませんが「海馬くん!先に行っちゃったのかと…先生?」
「おお!お前も当番だったな、これ返却しといてくれんか?」
「本ですか?構いませんよ」
「助かった!ありがとうな!」


「どういたしましてー」
「…」

「…じゃあ図書室行こ、って…海馬くん?」
「…」
「図書室こっちの階段の方が近いよ?」

「…」
「あの…」

「…」
「…海馬くん?」

「…」

「なんで黙ってるの?」

「…」

「…」

「嘘だ」

「え?」
「最初から行くつもりなんて無い」
「??」

「わからないかな、アンタを騙したんだよ」


見下ろせば女は訳がわからないという顔をする。どうして理解出来ない、本当ならここで逆上するべきだ、調子が狂う、苛々する、駄目だ、想定外だ、離れたい、早く離れてくれ、消えてくれ、消えろ、消えろ、失せろ



「あの…なんでそこまでするの?」
「せろ…」
「?」
「失せろよ!」




騒がしかった廊下が静まりかえる、  やってしまった。この女が悪い、怒鳴るつもりなんて無かった、琴線にわざと触れたのはこいつだ、恨まれる道理も憎まれる筋合いも無い、悪いのはこいつだ、悪いのは








「うそ」

「……は…?」

「だから、それも嘘なんでしょ?」
「おい…なに言って「本気で騙そうって思ってたなら種明かしなんてしないはずだもん」
「…」
「海馬くんがほんとうに賢い人間だったらの話だけど、ね」

「馬鹿にしてんのか?」

「してない。人を散々馬鹿にしてるのはそっちでしょ?」




















「脚…、」

「………」

「そんなに脚ガクガクさせてる癖によく言うよ」

「…さっきのちょっとびっくりしたから」
「相当の間違いだろ?」

「……誰のせいよ…ふふっ、まぁいいや」









いつの間にか誰も居なくなった廊下に夕焼けが差し込み、女は眩しさに目を細め手で日除けをする


「今、笑う所じゃなかっただろ」
「えっ私わらってた?…おっかしいな、何でだろ……急に気が抜けて、なんかホッとしちゃったんだよね」














「面白いね、君」

「?」

「名前」

「え?」
「名前なんていうの」

「…ミョウジナマエ。」

「ミョウジね、」
「……」





傑作だ、


名前を尋ねただけで訝しげに見詰められ、何故だかそれすらも愉しくて可笑しくて仕方がない、 面白い、ミョウジナマエ。










「…あの、さ…私の顔になんか着いてる?」
「ミョウジさん」
「は、はい」
「図書室、行こうか」
「…!!、うんっ」











(20100308)








 
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