「なにやってるの?」
「自分で考えろ」
わかんないから聞いたのー!と座る瀬人の首にまとわりつけば「その脳は〜(あまり聞いてなかった)」 と言われる
大人しく画面を覗きこむが見たことの無いタイプのゲームのようだ
とりあえずアクションゲームでないことは確かで(一度プレイ中にスキンシップを謀ったら殺されそうになった)、かといってRPGでもなさそう…な気がする
「学校が舞台って珍しいね」
「…貴様は何を言っているんだ」
このたぐいは日常のリアリティーに近ければ近いほど興奮するものだと語られますますわけがわからない。
「あ、なんか出てきた!」
いちいち喋るなうっとおしいと言われるが耳に入らず目が画面に釘付けになる。
『セトくんおまたせ!ちょっと先生に呼び出されてたの、あ 今わたしが何かわるさしたと思ったでしょ?』▼
・テストの話をふる▽
・思ってない▽
「な、にこれ?」
「……貴様ならどうする」
「へ?」
「二度も言わせるな、この場合の対応だ」
あの、その前にいろいろつっこみたい所満載なんだけど。どうして瀬人がこんなゲームしてるの?あ、海馬コーポレーションの新製品とか?瀬人が自分で考案したゲームの試作をプレイしてるのは珍しい事じゃない。いや、重要なところはそこじゃなくて、
「この「ナマエ」ってキャラクター私に…って名前まで一緒!」
「安心しろ名前はプレイヤーが自由に選択出来る様にしてある」
「あ、そうなんだ」
じゃなくて、
「…私にそっくりに見えるんだけど」
「当たり前だ。お前の写真をソリッドヴィジョンで三次元化させ我が社の最先端技術により最も実像に近「もうわかった」
「…」
「本人の許可は取りましたか?」
「無論だ」
「いつ、」
「フン、さぁな…」
いやそこ濁さないでよ。あ、なんか腹立ってきた
「で、貴様ならどうする?」
「…知らない」
「おい、」
「知らないものは知らない…」
「…つまり俺が意見を求めてやったにも関わらずそれを拒否すると?」
「ひ、人の気持ちを考えないやつなんか知らない」
「何を言っている」
ここまで言っても変わらない瀬人の態度に頭に血が昇る
「瀬人は、別にいいのかもしれないけど、わ私はこういう風に自分の顔とかが知らない所で笑ってたりとかすごい嫌なの。」
口がわなわなして情けない声しか出せない。
「ましてや知らないいろんな人の所で笑ってるとか、それで楽しんでる人がいるのって気持ち悪い。」
「ナマエ」
「大体いつも誰々と話すな、どこに行ってたんだ、とか言う癖に商品の私だったら良いんだ」
「おい、」
「私ばっか一人で彼女ごっこして「いい加減にしろ!」
強く遮られて我に帰る。久しぶりに本気で怒鳴られた。目じりが水気をおびてくる
「…わ、私今日はもうかえ「こっちにこい」
「…」
「早くしろ」
瀬人の目が据わっていて恐怖で声が出せない。
言い返すのを諦めのろのろと隣まで行くと急に腕を引っ張られ瀬人の膝のすき間に座らされる。
「やっ…」
「おとなしくしろ!」
「…っ」
後ろから抱きすくめられ頭上に顎を乗せられる。この男は一体何がしたいのかわけがわからない
暫しの沈黙
「…」
「俺の話を聞け」
「…」
「そこは貴様の悪い癖だ」
「…」
「…まぁ良い。」
瀬人はそのままの状態でコントローラーのプラグを抜き取り代わりにマウスを接続させる。
静かにカチ、カチ、とクリック音だけが響く部屋で私はずっと俯いていて、ようやく頭上からおもりが離れたと思ったら顎を持ち上げられた。
「モニターを見ろ」
モニターには複数の女の顔が映し出されている。
「来春発売予定のこのゲームだが、これは男の主人公がこの女逹の中からターゲットを決め己の虜にすべく日常会話を繰り返していくというものだ」
「…変なの。」
「これは娯楽の一種だ、…攻略対象は全部で五人だ…わかるか?」
なにが。と低く問かえそうとしてモニターに目を向ける
画面には六つの頭がある。数が合わない。
「…一番下のその女には恋人がいる。それにつき、この試作にしか入れていないウルトラレアキャラクターだ。」
「…」
「しかも中々の独占欲を持ち合わせているからな…他の女を攻略する事は不可能だ」
「…」
「…何よりそれによって悲しむ顔を俺が見たくない」
「で、誰が人の気持ちも考えない奴なんだ?」
「…ごめ、んなさいっ」
私の為にそんなことしてたの、とか私が話かけなかったら何の役にもたたなかったのに、とか可愛くない言葉しか浮かんでこなくて、寄り掛かった瀬人の胸部がやけに頼もしいなとか汗かくんだなとかにいちいち心が応えて少し泣いた。
〜〜〜
「で結局ゲーム続行するの」
「当たり前だ。俺の力を持ってしても貴様を攻略するのは難しい。」
「…だからさっき本人に聞いたの?」
「助言を求めただけだ」
「あっそ」
「貴様…!…フン、まぁ良い」
「?」
「何にせよナマエを攻略できるのは俺ただ一人のみだ」
「なんか…やらしい。」
「貴様…!」
「うそうそ!すごい嬉しいの!」
(傍にいる貴様が俺に声をかけない訳がない。)
(20091024)
確信犯