zzz           . | ナノ





「ねー」
「…」
「海馬くーん」
「…」
「機嫌なおしてよ…」
「…」
「私が悪かった!」
「…」
「…。」


「あの、わたし三年D組に用事があってね」
「…」
「だから下に行ってきたいなーなんて」
「…」
「待ってて…く「…」
「…」
「…」
「やっぱり、先帰っちゃって平気だから!」
「…」
「ま、た今度ゲームセンター一緒に行ってもいい?」

「…」

「…」

「…」

「じゃあ、ばいばい。」






「貴様などせいぜい持って三日だろうな」
「!!」
「玩ばれて棄てられるのがお似合いだ」
「…」


憎しみが火を吹き顔を炙っていく。私何もしてないのに!なんでこんなに決定的に険悪な雰囲気になってしまったの?だいたい最初から付き合うつもりなんてない、あの場でそう言えていたらこんな事にならなかったのだろうか



昨日の放課後名前もしらない男の人に声をかけられた。道を尋ねられ、こたえると実は三年の先輩だという、君は俺を知らなかったろうけど俺は前々から知っていたんだ、単刀直入に言うと好きなんだ、もし君がいいなら付き合ってくれないか、返事はいますぐとはいわない、だけど必ず返してほしい、でなけりゃ諦めがつけらんないから、D組、三年D組だってだけ覚えておいてくれないか


(告白なんてされた事なかったし、私ちょっと浮かれてたのかな、そんなつもりなかったけど)


翌日、誰から聞いたのか、はたまた静観されていたのか彼は事のすべてを知っているようで突然の急用とのたまって約束をキャンセルしようとした私を一瞥し「もう少しましな嘘はつけないのか」とポツリ

真っ青になってごめんと呟く私、そうしていまここに至る。


(やっぱり私が悪い、よね)


言いづらかったにせよ騙した事に変わりはない。しかも折角誘ってくれたのになんてひどい女、でも返事は今日、言うしかないと決めていた。モヤモヤしたまま海馬とゲームなんてしたくなかったのだ



(でもこのこと海馬に知られたくなかったんだもん…)







「付き合うつもりなんて、ないよ」
「どうだかな」
「…何それ」
「その腑抜け面でよくぬかすわ」
「海馬、意味わかんない」
「…」
「…もう私行くから」








ガタガタッ




「え、やっ、なに…」
「貴様は」
「やっ、…やめて…!」


大きな身体が起き上がる。その途端、強い力で机の上に押さえ付けられた

突然の出来事に加速した恐怖心から必死にもがくが男の力に敵うはずもなく、更に両脚の間に海馬の身体が割り込んでくる

「いやだっ離して!」
「貴様は無力だ」
「なん、でこんなこと…」
「現に非力故、俺にこうされても抵抗の一つすらとれん」
「…やっ、いや!」
「これはとんだ不埒千万だ。今から男の元へ向かう女が他の男に組敷かれている、なんてな」
「か、かいば…」
「無様だな、ミョウジ。」
「…」



くぐもった声に、鳩尾に置かれた頭の重み。私の胸に押しあてられたそれは微動だにせず、教室は水を打ったように静まりかえった







「びっくり…した」
「何をされると思った」
「っ、おちょくってるの?」
「そうじゃない」
「じゃあ何なのよ」
「…心拍数が早いな」
「答えになってない」
「…意識、しているのか」
「もういい、離してよ!」





気が付いてしまった もう手遅れだ、



こんなこと誰にもされたことなんてなかった。こんな風に私達の違いを見せつけて欲しくなんてなかった、違和感は違和感のままぬくぬくとしていたかったの、向き合う必要なんて無かったんだよ、だって私はただの女だから貴方もただの男だと信じているから、いつか視線を逸らされるくらいなら最初から視線を合わせないほうがずっとましだって、秤に掛けた片方に封をしたのよ


「私はね、」
「…」
「…」
「…私は、なんだ」



この男はこんな気持ち微塵もしらない、だから私は泣きたくなる。なのに彼の背の方が余程泣いているみたいで、声ばっかり落ち着き払っちゃってるものだから、もう どうしようもない。




「 行くのやめようかな」
「……何を言い出すかと思えば、貴様は余程の馬鹿か」
「え、じゃあ行ってもいいの、」
「好きにしろ」


嘘。この指、この腕、この肩が外れないのは、この額、この頭、この体が離れようとしないのは間違えようのない事実のクセに


ギュっと抱きしめようとすると嫌がるように身体を捩られる
それなのに胸元を潰れんばかりに圧迫され、やや呆れながら見た窓越しの茜、



「きれいな夕焼け…」
「…もう離せと言わないのか」
「いいかなーって」
「、何だと?」
「顔、見せて。」


除かれた重みと引き合うように上体を起こせば不貞腐れた様な顔






余裕綽々なような私はまったくもって海馬に大敗し、一敗地に塗れながら白旗を降る。
勇敢で、つよいひとだ、あの安穏とした私達を取り返しのつかない程粉々にしてしまった。そして残った臆病で狡い私までも包もうとしている、

  こんな思惑をもし彼が知ったら落胆されてしまうかもしれない、だから、ぜったいに言わない、言わないよ、言えないよ、海馬、私だけを見て、ずっと、何も知らないままでいて






「…案外不器用なんだね」
「…誰の所為だと」
「私?」
「…」
「ふふっ」
「…何が可笑しい」
「せいぜい3日で棄てられるんだっけ」
「!!」







「そうならないよう、がんばるね」













(好きにしろ)(そうさせてもらいます)


(20100102)
(悔しい)(私ばっかり)(俺ばかりが)(まるで翻弄されている)



 
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -