▼共依存

情緒不安定な宿主様と不憫バクラ
二心二体パロ
暴力描写あるのでお気を付けください。
最初に謝ります。ごめんなさい。






















「バクラ、ひとりぼっちにしないでよ。ずっと一緒に居てよ」

月明かりだけが差し込む部屋で、フローリングが光を冷たく反射する。その光は、二人の白い少年をなお白く浮かび上がらせた。

仰向けに倒されたバクラの胸に跨り、ぼろぼろと涙を流しながら、獏良は白い指をバクラの首筋に這わせる。自然とこぼれ落ちた雫がバクラの頬にぽたぽたと落ちるが、それを気にも留めずに冷ややかな目で自分に覆いかぶさる獏良を見上げる。
その目を見て、獏良の顔が更に歪む。今度は声をあげてわんわんと泣きだしたのを見て、バクラは付きあってられないと言うように首に置かれていた手を払おうとする。
その瞬間、獏良の目付きが変わる。ぎらりとむき出しの刃物のように鋭く、その視線はバクラを刺し貫いた。
一瞬怯んだその間に、獏良の指はバクラの首を鷲掴んでぎりぎりと絞め上げる。
ヒュッ、と渇いた吐息が喉から絞りだされ、冷えていた目が、怒りと言うには甘い、歓喜と言うには苦痛に満ちた、複雑な熱を孕んだ。

「ねぇ、褒めてくれたよね?バクラ、この手、褒めてくれたよね?女みたいに綺麗な手だって。バクラもそんなに変わらないのにさ。ボクね、すごく嬉しかったんだ。だからさ、」

“バクラも嬉しいでしょう?”

耳元で、そっと囁く。その顔は涙の筋を残しながらもどこか恍惚としていて、得体のしれない不気味さを感じさせた。
酸欠の苦しみから逃れようと、バクラがはくはくと空気を求めて口を動かしながらのたうつ。

「ボクはね、バクラのこと好きだよ。ボクより筋肉が付いてる体とか、ボクより硬い髪の毛とか、ボクより長いまつ毛とか、ボクの手より骨ばってる手とか、ボクより強いところも、他はみんなそっくりなのに、ちょっとずつ違うんだよね。そんなところが大好きだよ。でも、なんで一緒じゃないのかな。同じ体なのに。バクラなんて大っ嫌い!!」

静かな口調から一転して、癇癪を起したように喚き散らす。細い首に更に指が食い込む。負の感情を湛えた緑の瞳が、暗い空間の中で存在を主張していた。
耐えきれなくなったバクラが腕を伸ばし、獏良の腕を掴む。力の入らない腕で、傷つけまいと、それでも引きはがそうと手のひらに力を込めると、僅かに伸びた爪が獏良の肌をひっかいて赤い線を残した。
表皮を軽くひっかいただけのそれだったが、首を絞めた続けたままに獏良はその跡を酷く傷ついた顔で呆然と見つめる。ゆっくりと、もがくバクラに視線を移し、苦しげに大きく息を吐くと歯をむき出しにして怒りの形相を浮かべた。

「バクラが、バクラがっ!ボクを傷つけた!!酷いよバクラ!!酷いよ!」

涙を流して歯軋りしながら、震える手で尚更強く絞める。空気どころか血流もせき止められたバクラは、ぼんやりと霞みゆく意識の中で獏良の腕を掴んでいた手をおもむろに離す。そしてそのまま獏良に向かって腕を伸ばし、頬を包むように撫でる。驚いたように見開かれた翡翠の瞳が平静を取り戻し、吊りあがった目元が穏やかな曲線を描く。それと比例するように、手から力が抜けていく。力を込めすぎた指は、陶器のように生気を感じない白さになっていた。
ようやく空気を取り込んだバクラは、激しく噎せながら痙攣する。肺がびくびくと膨らむ感触を太ももに感じながら、獏良はバクラの髪を愛おしそうに、優しく撫でてやる。
咳が落ち着いても未だ顔を真っ赤にし、苦しそうな呼吸をしているバクラは、ねっとりと甘い視線を獏良に送りながら口を開いた。

「どこにも行かねえから、心配すんなよ」

掠れた声でそう告げると、獏良の顔が嬉しそうに綻ぶ。

「うん、バクラ。ずっと一緒だよ。どこか行っちゃったら嫌だからね。大好き」

「オレ様も、了のこと、好きだ。…あいしてる」

その言葉を聞いて目を輝かせると、感極まったようにバクラに勢いよく抱きついて、すりすりと身を寄せる。

「もしどこか行っちゃったら、殺すから」

ゾッとするほど低い声でぼそりと呟く。その顔はちょうどバクラからは見えないが、微笑んでいるのだろうと思った。
獏良が腕に力を入れてより強く抱きしめる。シャツ越しにバクラの背に強く爪を立てて、ひとりほくそ笑んだ。その感触を感じて、バクラも満足したように表情を和らげる。
二人きりの歪んだ世界で、お互いの声無き笑いが空気を揺らしていた。


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ごめんなさい。でも頭おかしくて自己中で独占欲の強い宿主様も好きなんです。
宿主怒ってる理由はバクラが知らない人と話してたとか先に帰っちゃったとか一人で遊びに行っちゃったとか下らない些細なことです。各自好きな理由で保管ができるようにですね…(ただ説明スペースが無かっただけ)
いつもこんな感じで酷い目にあわされるけどそれで「あ〜オレ様愛されてんな〜」ってホクホクしちゃうバクラさん。問題が無いように見えて問題しかないですね。

元は甘いお題で出てきた「ひとりぼっちにしないで」で書いてたんですが原型無くなりました。


2013.06.30



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