▼フローライト

くんずほぐれつしてる雰囲気えろっぽいもの。
行為を想起させる描写、肌の絡みが多くなっております。苦手な方はお気を付けください。
いつも通りの捏造とキャラ崩壊です。



































悔しさと怒りから砕けんばかりに握りしめた牌を、勝ち誇った王の顔に向かって投げつければ、翳した右手で軽く受け止められた。

「オレの勝ちだな」

盗賊は唸りながら忌々しげに王を睨むも、王は余裕の表情のまま脚を組みかえる。

「負けた者には罰を、そういう約束だったはずだが」

「こんなもんイカサマだ」

「負け犬の遠吠えか、惨めだぜ」

盗賊から投げられた牌を弄ぶと、机にわざと音を立てて置いた。カツン、と硬質の音が部屋に響く。王は勝者の余裕の頬笑みを浮かべながら、盗賊の反応を見る。
盗賊はと言うと、図星をつかれて言葉に詰まっていた。王の紅く輝く瞳から逃れようと、視線を彷徨わせて居心地悪そうに吐き捨てる。

「クソガキが」

「そのクソガキに負けたのはお前だ。さぁ、そこの寝台で良い、寝ろ」

ちくしょう、と呟いた盗賊だが、抵抗はせずに素直に寝台に横たわる。この傲慢な王が嫌と言って素直に引くとは思えず、現にこれまでもそうだった。何をされるかなど、もう分かり切っていた。
盗賊は舌打ち交じりの溜息を吐き、諦めたように目を伏せて寝台に寝転がる。深紅の羽織がシーツの上にばさりと広がった。不吉な色合いに王は少しだけ顔をしかめるも、そのまま盗賊の上に覆いかぶさり、深紅の羽織をはだけさせて肌に手を滑らせる。
温い指先が、確かめるように鍛えられた筋肉をなぞっていく。いつものように熱を高めるわけでもなく、ましてや、いたぶり、傷つけるわけでもない。ただ、確かめるように温もりを伝えてくる指に盗賊は戸惑い、おい、と小さく言葉を発して逃げるように体をずらす。

「動くな」

疑問をねじ伏せるかのように、王が先手を打つ。盗賊はピクリと僅かに体を揺らし、苦しげに息を吐き寝台に身体を任せた。逆らうこともできずに、それでも最後の抵抗として顔を背ける。
王の行動に動揺しながらも、盗賊は先程の言葉を脳内で反芻させる。確かに王は罰と言ったのだ。それなのに何故、こうも優しく触れるのか、慈愛に満ちた瞳を向けるのか。
王の肌から伝わる熱を感じるたび、胸が詰まるような感覚を覚え、その息苦しさともどかしさに盗賊は瞳を潤ませる。

そうこうしているうちに、王は視線を盗賊に向けながら首筋を甘噛みし、唇を落としたり、布越しに二の腕を撫でたりと忙しない。
行為の時の愛撫とは違う、快楽とは別の何かを与えるような触れかたにも関わらず、盗賊の身体は敏感に感覚を受け止め震える。

ただ翻弄されるだけの自分が惨めで堪らず、腕で顔を隠そうとするものの、途中でしなやかな指に掴まれて手首に唇を落とされる。
そのまま握りしめられた拳をほぐすように、王は指先を絡ませていく。拳から徐々に力が抜けていくのを確認すると、するりと隙間に指を差し込んで逃がさぬようにしっかりと繋いだ。

王の傷一つない滑らかな脚と、盗賊の肉付きのいい傷だらけの脚とが絡み合い、よりお互いの体を密着させる。脇腹を撫でていた王の手が背中に回り緩やかに撫でると、盗賊はこそばゆさに体を捩った。
徐々にしっとりと汗ばみ始めた、つややかな褐色の肌同士が絡み合う。

どちらからとなく頬を擦り合わせ、目を合わせる。普段は強く硬く、鋭く光る盗賊の紫の瞳だが、その鋭さは今や失われ、ただ力なく揺れるだけだ。触れれば壊れてしまうのではないかと、王に錯覚を起させるほどに。

存在を確かめるように頬の傷痕を舌でなぞれば、盗賊は怯えたようにヒッと喉を引き攣らせて身を引く。しかし、その動きは絡み合う手や脚によって阻まれてうまくいかない。
盗賊が暴れないことを確認した王は、そのまま傷痕を何度か舐める。
きつく目を閉じて身体を強張らせる盗賊がおかしく、そして同時に哀しいとも愛おしいとも思う。
この傷を付けられた時、どれほど痛かっただろうか。それを暴かれる今、どれほどの痛みを心が感じているのか。
全て知ることのできない歯痒さから、王の手に力がこもる。握られた手の痛みからか、盗賊の口から不安げな息が漏れると、安心させるように髪を優しく梳いて微笑みかける。そしてまた、傷痕に唇を寄せた。周辺の皮膚よりも薄いためか、凸凹しているそこを舐めあげる度に、逞しい体は弱々しく跳ねる。

「いい加減にしろ…ッ」

ついに盗賊が小さく叫び、目尻を潤ませながらも、シーツを握りしめていた手を解いて王の肩を押しのける。
だが、背中に回された腕に力が込められると、そのささやかな抵抗も無駄に終わった。

苦しいほどに抱きしめられて、悔しそうに噛みしめられた唇からは甘さを帯びた熱い吐息が漏れる。吐かれた熱に首筋を撫でられながらも、王は懲りずに、今度は瞼にまで舌を這わせていく。
長く生え揃った睫毛の感覚を楽しみながらも、時折歯を掠らせたり、軽く吸ってみたりして、ひくつく盗賊の反応を楽しむ。王の肩を押し返していた腕は、いつの間にか縋るように王の首に回されていた。
ようやく傷痕から王の唇が退くと、盗賊は安堵したように溜息を洩らした。唾液と汗が混じり、肌をぬらぬらと淫靡に輝かせる。

ゆっくりと窺うように開かれた濡れた蛍石の瞳と、幼さを残した紅玉の瞳が見つめ合う。

再び絹に触れるように優しく抱きしめられると、全身を包む温もりに盗賊の眼からぽろりと涙がこぼれた。そして一人納得する。あぁ、これは罰だ、と。
一度こぼれた雫は、決壊したかのように次々と溢れ出てくる。逃げることもできず、息を殺して王の背に爪を立てて耐える。

縋るように王の肩に額を押しつけ静かに泣く盗賊を、王は気付かぬふりをしたまま受け入れることしかできない。胸中の痛みを受け流すように、盗賊の髪を乱暴にぐしゃりと撫でた。

白銀の髪に隠されて見えないはずの盗賊の口が、偽善者め、そう動いた気がした。




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表面上どう取り繕おうと盗賊王の本質は、触れたら簡単に崩れるような脆いものじゃないかと 勝 手 に 思っています。
盗賊にとって一番辛いのは優しくされることなんじゃねとか、王様はそれを知っても優しく盗賊に触れ合いたいんじゃね(しかし受け止めきれない)とか、そういう妄想が詰まったものです。本心は盗賊を泣かせたいだけだなんてそんなことはありません。
相変わらずの情緒不安定盗賊王。あとやたら触れたがり知りたがりな王様。我が家の通常運転です。すみません。
題のフローライトはめちゃくちゃ脆く割れやすい鉱石です。色は紫、青、緑など様々。とても綺麗ですので、是非画像でも実物でもご覧ください。

(書きながら思ったけど、こやつらお互いがよく見える真昼間から何を致しているのでしょうか)


2013.12.31



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