や ゆ よ



ヤッテランネーナァ、と若者が言った。ヤンナッチャウゼ、と続ける。働けど働けど我が暮らし楽に成らざりけり、未来の為に納めたなけなしの金は老い先短い虫に食い潰されて雀の涙ほども返っては来ない。阿呆らし。「でもま、」イキテケルダケマシッショ、と若者は笑った。
20140413

ゆらゆらと木々の間を泳ぐ、さくら色をした魚をこどもの頃に見たことがある。おとなは馬鹿にしたけれどあれは夢なんかじゃあないのを僕は知っていた。昔むかし、誰もが皆見ていたはずの光景をゆっくりと忘れてゆく。だけど僕はずっと覚えている。森に暮らす魚を、月で踊る兎を、心にきらめく、世界を。
20140422

良くよく考えなくとも私は幸せなのでしょう。妬まず、驕らず、裏切らず、そうやって誰にも嫌われることなく生きてきました。けれども何だか胸に穴が空いてしまったかのようで、なぜか小さい頃に悪いことをした時を思い出すのです。すれ違った人のむき出しの感情が、どうしてだか羨ましく見えました。
20140618

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