夜明けと共にさようなら




莉奈「こっちだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

絢「落ち着け馬鹿」

莉奈「うぅ!!…だって、こっちから凄く良い匂いがするんだよ!!!!」

絢「お前は犬か?犬なのか?これから首輪付けて飼ってやろうかぁ?」


莉奈「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

絢「はっ…駄犬が!!向こうに戻ったらきっちり躾けてやる

(チッ…大分奥まで来たんじゃないか?)」

莉奈「心と発言が反対だよ!!ねぇ、気付いてる?ねぇ、気付いてる!?」






二人は取り敢えず、人気のある場所を探して彷徨っていた……のだが…いきなり、莉奈が「え?凄い良い匂い!!あっちか!!」なんて、ほざきやがった…所為で道を外れて道なき道に入ってしまった。

俺でもこの暗闇を目印無しで元の道に戻るのは難しいし……多分、不可能であろう。
しかも、先程からこの森の先が見えない。全く見えないと言う意味ではない、霧や雨…雪などの天候不良などの外的要因ではない。
視界は良好、天候不順も共になし…ならば何故?と聞きたいだろうが…多分、それは…本能的にこの先には近づくなと言っているのだろう。





この先には何かが居る。

分かる。理解する。理解できる。

本能的に、科学的に、理屈的に、……子供の駄々を捏ねるように。

唯この先には言ってはいけないと







こんなにもはっきりと分かるのだから。




絢「(本当に厄介な所に来ちまったもんだぜ………)」




溜め息を吐いても始まらないのなら、とにかく…俺は……。




絢「(こいつを守るくらいはしてやるよ)」









たった一人の、相棒と呼べるこの少女を。









その時、俺でもない…莉奈でもない声がこの場に響いた。

何処からともなく、全く気配のない状態で見えた……微かな香りと淡い光に。





「人を惹きつける効果でもあるのかしら……、この蝋燭は」





揺らめく光がこの冷たい空間を暖めてくれる気がした。











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