※土方十四郎 (学パロ甘)
「ひじかたぁ〜今年の風紀委員の名簿どうしたっけ」
気だるそうに呼ばれた自分の名前。顔を上げれば俺の名を呼んだ張本人、風紀委員長が窓の外をぼーっと眺めていた。外から流れ込む風によって、カーテンが少しなびいている。
「ファイリングしてあるって言ったじゃないすか。それと名無しさん、ここの窓は開放厳禁っす」
名簿のファイルを渡しながら窓をピシャリと閉める。すると彼女は、下の名前で呼ぶな、と俺を睨んだ。
「はいはい、すみませんね委員長。そんなことより業務用品の場所くらいさっさと覚えてください」
「だって春先ってバタバタしてて忙しいし〜」
あんた去年も幹部やってんだろ。なんて、心の中でツッコミをいれつつ仕事に戻る。
それでも、せっかくの休日であるゴールデンウィークを返上してまでこうして彼女に付き合って雑務をこなしているのは、彼女が俺にとって尊敬に値する存在だからだ。
忘れもしない、一年前の入学式のあの一件。
新学期早々にも関わらず、突然勃発した隣町の高校との乱闘騒ぎに単身で乗り込み、見事鎮圧した女子生徒がいたのだ。
たまたまその光景を目撃していた俺は、その圧倒的な存在に心酔した。
そして、彼女が風紀委員の副委員長であると知った時には、何も考えずに入会届を書いていた、という訳だ。
あれから一年。
最高学年になった彼女は、今年委員長になった。
そして二年に進級した俺は、彼女に言われるがまま副委員長に。
初めは抵抗もあったが、ひと月たった今では仕事もすっかり板についてきた。
「あれ?土方あした誕生日じゃん?」
不意に、名簿をパラパラとめくっていた彼女が声を上げた。机に無造作に置かれたファイルは、俺の簡単なプロフィールの頁が開かれている。
「そうっすよ。祝日なんで誰も祝っちゃくれないですけど」
書類から目を離さずにそう答えると、彼女は俺の机の隣まで来て笑顔で言った。
「プレゼント。何が欲しい?」
顔をあげると、笑っている彼女から目を離すことが出来ない。
「名無しさんが、欲しいっす」
誓って、本当に無意識だった。俺の意思とは関係なしに飛び出した言葉に、彼女はしばらく呆気に取られたあと、手にしていた書類で俺の頭を殴った。
「不純異性交遊はご法度だぞ土方。反省文の覚悟はできてるんだろうな?」
ニヤリ、と笑う彼女にはいつまでたっても敵わないのだろう。
「上等っすよ」
小さく笑い、彼女を抱き寄せてキスを落とした。