※土方十四郎 (切微裏)



朝起きたとき、もう自分の隣に彼の姿はない。わかってはいるけれど、その事実はどうしようもなく私を憂鬱にさせるのだ。

彼とは時々会って体を重ねる。恋人ではないけれど、お互いに触れることを許し合った関係。始まりこそ偶然だったが、引き際をつかめないままダラダラと時間だけが過ぎ、いつの間にか依存していた。


その夜も彼は来た。

どちらからともなく重ね合った唇から、愛は感じない。それでも、体は彼を求めるのだから不思議なものだ。

彼もまた、私を求めて自身のそれを反りたたせていた。


「名無し……」

優しく紡がれた自分の名前に反応し、思わずナカを締め付ければ、小さく漏れるうめき声。それと同時に強くなる圧迫感。更には速められる律動に朦朧としてくる。

「出す、ぞ……」

彼がナカで弾けたと同時に、私は意識を手放した。





深夜、シャワーが床を打つ音で目を覚ますと、隣の温もりは消えていた。その主が浴室にいるのだから当然なのだが、またしても憂鬱が私に襲いかかる。

しばらくすると、浴室の扉が開く音に続き衣の擦れる音。

──今夜も、帰ってしまうのか。

冴えない頭でそんなことを考えていた。


とうとう、身支度を整えた彼が浴室から姿を現した。そのまま冷蔵庫のミネラルウォーターを口に含み、タバコに火をつける。

一服を終えると、彼は来たときと同じ黒の隊服に身をつつみ、一瞥もなく家を出て行った。


あとに残ったのは、ダイニングテーブルに置かれたままのミネラルウォーターと、タバコの香りだけだった。

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