君に恋してる
「がくぽさん、ちょっと聞いて頂きたいことが…」
「んー?何ー?」
俺より背の低いキヨテル先生の茶髪が揺れる。どうにも人に聞かれたくない話らしく、グミやリリィのいない間に俺の隣にやって来た。
「最近僕おかしいんですけど…」
「おかしい?」
「なんか…僕には心臓はないんですけど、その…ある人を見てると…」
「苦しい?」
先生は目を伏せながら頷いた。ちょっとした仕草でも可愛いなあと思う。誰にもとられたくない、とも思うけど。
「それ恋じゃないの?その人のこと好きなの?」
「…恋?……好き?」
「うん」
先生に好きな人がいるんじゃ、俺に勝ち目ないかな。まず俺男だし。
「分かんないです、そんなの…」
「先生自覚ないんだ」
「だって、僕はただの機械ですよ?」
「でも先生でしょ?」
「そう、だけど…。僕が教えるのは勉強です。恋は知りません…」
「恋も勉強も変わんないよ。」
先生が首をかしげる。まったく分かってない顔だ。頭はいいのにこういうことには疎い。俺とは正反対だ。
「これが、恋ですか?」
「苦しいんでしょ?」
「……今なんだよね…苦しいの…」
「……ん?」
「あ、あっいや何でもないです!聞いてくれてありがとうございました!」
今、って言った?ある人見てると苦しくて、それが今で、え?
それって、ある人=俺?
両思い?
しばらく立ち尽くしてたけど、グミとリリィが買い物から帰ってきて、気がついた。
「がっくん何してんの?キモい」
「キモくないよ…」
「いやキモいって。にやけてんなよな。」
え、俺にやけてる?何で?
「あっそうだ先生!」
「はあ?」
「リリィ、グミ、ごめん。あとで朝飯の準備手伝うから!」
「ちょっと兄さん!」
グミの声を振り切り2階にかけ上がる。廊下に先生がいたから、とりあえず抱き締めた。
(俺も恋してたよ)
(マジですか)
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