novel | ナノ


▼ いち

まだ薄暗い部屋に別れを告げて人がまばらな街を歩く。
街で一番大きな病院に着くと、入り口に『エルフお断り』と書かれた張り紙。
それをじっと見つめていると、ここの看護師で在ろう女性が声を掛けてきた。

「あら、患者さん?受付は二時間後よ」
「いや…この張り紙、前はなかったなって」
「あぁ、それね…エルフの親子が診察に来たのだけど、たまたま視察に来ていた騎士に目をつけられてね、揉め事を院内でしたのよ。まだ街に騎士がいるし、しばらく診察するのをやめたの。騎士には逆らえないもの」

ため息混じりに話した女性は「患者に種族は関係ないのに…」と小声で付け足した。

「…エルフはどうなったの」
「騎士に連れて行かれたわ…もしかしたらもう…」

言葉を飲み込む女性に、コウガは目を伏せて、閉じた。

最近の騎士によるエルフ差別は過激化してきている。近々戦争でも起きるのではないかと思うほどだ。いや、起こそうとしているのかもしれない。

「わかった…ありがとうございました」

女性に頭を下げて病院を立ち去る。
エルフの親子の足取りを追うだけ虚しくなるだけかもしれない。それでも、自分の目で確認しない限りはどうなったかわからない。

路地裏の影に身を潜め、取り外し式フードを襟につけて被る。顔を見られない様に。

騎士の宿舎に行けば何かわかるハズだ。
エルフの親子の事も、自分の任務のことも。

一歩、踏み締める。


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