novel | ナノ


▼ 天の川

今日は願い事をする日だよ。と教えたら、そうなんだ。と興味がなさそうに返された。
でも、少し笑っていたように見えた。

星が瞬く夜空の下、二人で星を見上げる。宿をとってわざわざ夜に出掛けたわけではなくて、野宿だから夜空の下にいるわけで、一緒に星を見上げられるなら、野宿もいいな。なんて思ったり。

「天の川、知ってる?」
「離れ離れになる話?」
「そう。一年に一回しか会えないなんて寂しいよね」

おとぎ話にある切ない物語。コウガは幼い頃絵本で読んだきりでうろ覚えだったが、恋人になった二人が離れ離れになってしまうのは何故か覚えていて、ふと、隣に座るメリーリを見ると、星に照らされていていつもより綺麗に見えた。

「あれ?どうしたの?寒い?」
「いや…なんでもない」

ふい、と視線を逸らされて顔が見えなくなる。自分を見ていたのかと思うと恥ずかしくなって、顔が熱くなって、体育座りをして突っ伏す。

何気ない仕草や行動で、こんなにも心を動かされてしまう。

「コウガ、お願いあるの…」
「なに?」
「手、握って…?」

恐る恐る頭を下げたままコウガを見て、右手をそろりと出すと、なにも言わず、手を握ってくれた。

「ありがと」

真っ赤になった顔を隠すように突っ伏して、胸の音を聞いた。どきん、と高く脈打つ。繋いだ手からコウガの熱が流れてきて、嬉しくて、恥ずかしくて、幸せな気持ちになる。

「大きいね、手」
「別に」

素っ気なく返した横顔を見ると、少し、ほんの少しだけ頬が赤くなっているように見えて、そんなことはない、自惚れるなと頭を横に振って夜空を見上げた。

「きれいだね」
「あぁ」

この夜が、ずっと続けばいいと願った。


2015/07/07



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