PM1:56

冬になる一歩手前の期間は、だんだんと冷たい空気が流れてくるようになり何処か寂しいものがあるように感じる。
そんな空気を頬に感じながら政宗は窓に手を伸ばした。
換気の為リビングの窓を開ければ、外で遊ぶ子供達の声が部屋の中にまで聞こえる。この寒い空の下よくやるものだと子供の無邪気さに感心してしまった。次第に雪が降るようになればもっとはしゃぐだろう。
時計の針はもうすぐ2時になる所だった。
寒いといえど穏やかな光が射し込む午後に微睡みを覚える。

「Ahー…何も面白いtelevision番組はやってねえな…」

リビングでテレビを観ながら政宗はぽつりとそう呟く。決して何か面白い番組を求めている訳ではないが、政宗は現在暇で暇で仕方がない為テレビを観ていたのだった。しばらくリモコンを弄った後、結局報道番組のチャンネルに合わせた。やはりそれにも特に興味が湧く訳ではなかった。
報道番組では有名人の暴力問題、都内での死亡事故、介護問題等々のニュースをアナウンサーが滑らかな口調で読みあげていた。立派なアナウンサーがニュースを説明していると、どんなに大変な話題でも淡々としていてリアリティーがないように感じる。もっとも今の政宗の頭の中にはニュースは入ってはいかなかったのだが。
政宗はまたぼんやりとテレビの画面を見つめる。見つめながらとある人物を考えていた。
──恋人の事だ。
逢えなくなってどれくらい経つのだろうか。政宗はしばらく最愛の人の顔を見ていなかった。
恋人は高校の同級生で、大学も一緒だった。
運動神経が抜群で、ジャニーズ系の可愛い顔立ちをしていて、髪は天然の栗色。スポーツと比べると多少勉強は苦手なようだったが熱く真面目な好青年で校内での評判は高かった。
当時政宗も文武両道であった。つまり2人はライバル関係にあったのだ。
少なくとも政宗は彼を良きライバルとしか思っていなかった。大学3年目の夏、彼から告白されるまでは。
「好きだ」と気持ちを告げられ、政宗は最初こそ戸惑ったが彼の真摯な気持ちに動かされ次第に付き合い始めた。
やがて違う職場に就き、会える機会はめっきり減った。お互い仕事が忙しい身なのが原因でもある。
これまで交わした約束できっちり守れたものはあっただろうか。政宗は思い返してみたが、数えられる程しか出てこなかった。
元々今日も逢う約束があった。約束が駄目になってしまのは相手の方に急な仕事が入ってしまったからだ。
内心こうなる事が予想されていた故に、ああやっぱりなあ、と当然のように思ってしまった。
約束が無くなった為、その支度もする必要が無くなり政宗は手持ち無沙汰になってテレビを観ていたという訳だ。
別にテレビで暇を潰さなくても良かった。自宅で仕事をするなり趣味の料理をするなりやる事は沢山あったのだ。まだ完成していない書類だってある。しかし政宗は変に気だるくその気にはなれなかった。
冬の空気とはまた違う、冬に近い秋の何処か寂しい冷たい空気がリビングに入ってくる。それらに加え、今の政宗にはそれがなんとなく切ないように感じられたのだった。


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