少年時代の2人 交わる線番外
かつてクロロ少年の隣にはユイシキ少年がいた。
クロロ少年にとってユイシキ少年は全てだった。
生きるのに必死で癒しも何も無いクロロ少年の上に降ってきたのがユイシキ少年だった。
軽い体に上質な絹の服、丈夫そうな靴。健康そうな柔らかい体に血色のいい頬。よく手入れされた艶やかな黒髪は自分には似ても似つかない。
ずるい。そう思って、この少年の絶望した顔を見て指を指して笑って、見捨ててやろうと思った。
じっと、クロロ少年はユイシキ少年が目覚めるのを待った。そしてしばらくしてからユイシキ少年の目が覚めた。
うっすらと開いた赤い瞳は眠気にとろりと蕩けていてぼんやりとクロロ少年を見据えた。ムッと、気に入らない目だと重い潰してやろうと指を向けた。
_おはよぉ…
ぴたり、と止まり、きょとんとクロロ少年はユイシキ少年を見た。へにゃりととても嬉しそうに微笑んでいるユイシキ少年。途端に顔が熱くなる。この子は話に聞いていた天使なのだと思った。
くあ、とユイシキ少年は伸びをして目を擦りきょろきょろとあたりを見渡す。
_おはよ、ね、きみ。ここはどこ?
にぱっと笑って、そうクロロ少年に問いかけてきたユイシキ少年に、クロロ少年は赤い顔のまましどろもどろ答えた。ここは流星街だと。なんでも捨ててもいい場所なのだと。
ぽつ、とユイシキ少年は呟いた。自分は捨てられたのだと。
少し寂しそうな赤い瞳にクロロ少年は咄嗟に名乗った。自分はクロロ=ルシルフルだと。ここの事は教えられるだけ教えると。この天使を手放したくなかった。丁寧に羽を折ってカゴに閉じ込めたかった。
_オレはユイシキ=ゼロザキだよ
よろしくね、クロロくん、と微笑まれた。灰色の世界に色がついた気がした。