彼と結婚してしまうときっと死んでしまう気がする。そんな気しかしないのだ。だって、なぜならば。


同居人、氷室辰也は、米国にいたらしい。そりゃ、英語はペラペラだし、日本にいただけでは理解しきれない行動もする。モノの基準が違うのだ。アメリカってそりゃ自由の国だし、物の大きさも自由だし。いつから何年くらいいたのかは知らないけれど、アメリカ色に染まってる。
たまに旅行に行ったかと思ったらお土産はありえないほどカラフルだった。赤や黄色ならわかる。日本もあるし。けれど、青や蛍光オレンジはどうにも…。おかしい。身体に悪そうな気しかしないくらいの色だ。
日本でこれが生き残れるのか、と心配したこともあった。心配せざるを得ないだろう、絶対。そして、実際生き残って今一緒に住んでいるのが不思議なくらいでもある。

そんなソファに座って本を読みつつコーヒーを飲んでいる辰也を見る。前髪で左目を隠しているけれど、泣き黒子に整った顔で所謂イケメンの類である。確か、昔は少しやんちゃだったと誰かが言っていた。誰だったか。アメリカ基準で行くとそのやんちゃもこっちでは、やんちゃではすまない気も今はしている。

「辰也は昔やんちゃだったの?」
「やんちゃ?……そうだね、やんちゃ、だったのかな」

ニコリと微笑んでそう言うが、きっとやんちゃ以上だったのだろう。隠し事が上手いがうますぎて嘘だとよくわかる。ようになったと自負している。きっとわかってることもわかってて言ってるのだ。たちが悪い。手のひらで踊らされてる感が半端じゃない。
それが、とてつもなく、「なんか、悔しい」

ぼそりと小さく私の口からこぼれた単語に、辰也は、「As for me, it is mortifying that loving you is not transmitted perfectly.」と返した。

英語の成績が良かったわけじゃない。リスニングのテストだってオーラルコミュニケーションの授業だって、あの学校に居たのに全然ダメだったのだ。でも、今の英語もloving youだけは聞き取れた。むしろ、ここだけしかわからなかった。
ああ、このイケメンの顔から出てくる言葉はストレートだ。日本特有に折れて捻れていない。よくわかる。顔があつい。それ故に。今でも、倒れそう。いつかはこの言葉を聞きながら傍に居ることも慣れるのでしょうか。慣れれなければ、慣れれなければ、結婚なんて到底無理、だ…。いつになるかなぁ…。ぱたぱたと手で扇いで冷静さを取り戻そうとした。

 

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