京子ちゃんとケーキ | ナノ



「ねぇ、京子ちゃん」
「なあに?」
「駅前に新しくできたケーキ屋さん、行かない?」




私が聞くと京子ちゃんは目を輝かせて行く!と言った。可愛すぎるでしょうに、その笑顔。綱吉なんかに渡してやらないんだから。と、想い続けて何年目だろうか。

しかし、問題が私にはあったのだ。



「どうしたの?食べないの?」

そう若干上目遣いで問いかけてきた京子ちゃんに「食べるよ。ちょっと考え事してたの」と言えば「イチゴってどのタイミングで食べるか悩んじゃうよね」と微笑み返してきてくれた。そう、いちごを食べるタイミングも悩むものだ。
それ以前に、私の目の前にあるショートケーキは運ばれた時のままの状態で堂々と鎮座している。なぜかラスボス感が漂ってくるのは気のせいだろうか。いや、気のせいではないだろ。ラスボスだ。

そう。なにせ、私は甘いものが苦手だからだ。



苦手だけれど、京子ちゃんが喜ぶのであれば。と頑張ってきてはみたものの。もっと甘くなさそうなものを選べば良かったと後悔している。フルーツを使ったものやチョコなんかの方が甘くないものだったかもしれない。果物もチョコも苦手であって、本当にお前は何しにケーキ屋なんかに来たのだと問われてしまうレベルだ。
最初はコーヒーだけ頼んでいたのだが、京子ちゃんに「ケーキ、食べないの?」と言われてしまったからには、もう食べなければならないじゃないか。京子ちゃんを裏切るなど。誰ができようか。



見ると、既に京子ちゃんの前にあるケーキは半分となっている。早い。さすがは女の子。私も女の子の分類だけれど。
うーん、このショートケーキをどうしようか。さすがに彼女に食べさせるわけにもいかないだろう。2個目となってしまうし、それならば頼まなければよかったじゃないなど言われてしまったら立ち直れない。かといって、食べずにいるというのもお店に悪い。少し食べて残してしまおうか。罪悪感に襲われてしまうが。
考えた末にフォークで堂々と主張をしているイチゴを掬い取り彼女の皿に乗せる。ん?とわからない感情を少し表に出して私と乗せられたイチゴを数度見比べた。見比べたというか状況把握するために見つめたというか。

「…良いの?」
「食べてあげてよ」
「えへへ、ありがとう」

京子ちゃんは笑って苺を口に含んで、いつもの笑顔より可愛い笑顔を作った。その笑顔を見て、私は苺のいなくなったラスボス、ショートケーキを一口同じように口に含んだ。あぁ、甘い。甘すぎて何とでもなってしまいそうだ。これは困った。
とりあえずは、家に帰るまでは吐くのを我慢しなければ…。



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