きっかけも原因も対したことなんかやなかった。それやのに、売り言葉に買い言葉で喧嘩してもうた。引っ込みつかんかっただけや。すぐに謝れば良かったんに。それが出来とったらなんの苦労もせんわな。
いややー。教室の隅で塞いどったら、忘れ物をしたのか吉田が戻ってきて、どないしたん?と聞いてきよった。空気読めや。なんて思うのも仕方あれへん。何も見とらん振りして、さっさと出て行くとこやで。そこは。

「別に…何にもあれへんし」

ふてぶてしく返したうちに機嫌を悪うすることなく吉田は、「なんや僕には言われへんことなん?知った仲やのに」と軽々しく言い返してきよった。やつの思考はイマイチ理解でけん部分が多い。男子の思考なんて理解できてもしゃーないことばっかやけど。
今まさに、やったんやけど。吉田の笑顔にどないな威力があるんやろか。言わんでえぇことまで言うてしまう。人望の厚さか何かや、絶対に。しらんけど。


「…友達と喧嘩しただけや、自分が気に掛けることやあれへん」
「喧嘩する程仲ええ、言うやん。大丈夫やって、すぐ仲直り出来るって」


そう言いもち吉田はうちの手をとり、立ち上がらせて笑うた。喧嘩なんぞしたらその時点で仲ええわけないやん。多分、そないな意味やないんはわかっとるけど。けど。


「人生一度しかあれへんのやから、笑ってな損やで。とりあえず、そやな…。僕と一緒にお好み焼き食べ行こか。な!」


屈託のない笑顔で吉田は笑いやがった。口元にあるチャームポイントになっとるであろう黒子が変に効果を齎しとる。そないな笑顔で言われたら行くしかあれへんやんか。断れへんやろ。ただうちの意思が弱かっただけなんかもしれへんけど。
スカートに付いた埃を叩いて鞄持って吉田の部活が終わるんを正門で待っとくことにした。とりあえず、吉田のお好み焼きには紅ショウガをいれたるねん。待っとる間ずっと思うとった。実際入れたったらなんて云うてくるんかは楽しみやった。


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