はぁ、またか…。大きなため息をつく。一体どんだけなのよ、私は!ちゃぶ台をひっくり返したくもなるのを押さえて、ごろんと畳の上に転がった。怒られるので数秒で起きて正座しなおしたけど。


[雨、雨、降れ、降れ]


「見事に降ってますね」
「うぅー…ココまで来ると逆に清清しいわ!」


外を見れば、ザーザー降りの雨。水溜りが幾つも出来ていて、土はぬかるんでいるのが部屋の中から見てもわかるレベル。どうしてなのか、私が菊の家に遊びに来て帰ろうとすると雨が降る。呪われているのか!?って言うくらいに毎回。本当に呪われているとしたら、アーサーかイヴァンの仕業だな。今度会ったら一発殴ってやるんだ、こんちくしょー…!


「本当に、清々しいですね。ここまでされてしまうと」
「でしょー?私が一体アンタに何をしたんだって言うのよー…神さんのアホー!」
「ふふ、そんなこと言ってると上がりませんよ?」
「だ、駄目・・!ごめん、嘘!止ませて・・!」


菊が言うと本当に明日の朝になっても昼になっても、更に明後日になっても止んでないなんて普通にありそうで怖い。日本でも菊は八百万の神に愛されているから。この地球上で菊以上に愛されている存在を私は知らない。きっと探しても見つからないだろう。
正座しなおした足を崩して、うがーと机に突伏した。菊の入れてくれていたお茶もそろそろ温くなってきている。ぬるくなっても美味しいけれど、暖かいほうが美味しいのに。さっさと飲めばよかった。なんか、悔しい。悔しい。菊を一番愛してるのは、私だもの!神にも負けない…!と神様相手に喧嘩を売るようなことを思っている。
でも。想いなんて、伝えない。私と菊は違うもの。同じように見えるし、同じように生きてるけど、違うもの。似て非なるもの。わかってはいるけれど改めて思うと切なくなる。


梅雨にも関わらず、天気予報では奇跡的な降水確率0%だったので傘を持ってこなかった。ら、綺麗に外れて雨が降っている。降水確率0%でも私が菊の家に遊びに来たら雨だから、必ず持ってこなければならないことを失念していた。菊は一人暮らしだから、傘も基本的には菊のしかないので借りて帰る訳にもいかない。だから、私はちょっと菊の家に寄っただけでもお泊りコースなのだ。菊の家には、もう私の部屋っぽいのが出来てしまっている。どうしたものか。


「今回も明日の朝になれば止みますよ」
「そうだと良いんだけど…今は梅雨だからさ」


菊がこう言うと本当に朝になれば、雨はすっかり綺麗にあがっていることは多い。あ、お泊りコースと言っても、夜に何かするわけもなく。お話したり、時期によってはちょっと原稿のお手伝いしたりするだけ。私は何の原稿なのか分かってはいないんだけど。菊がお茶を啜る音がする。あぁ、私もお茶飲も。温くなってるけど。茶葉は何だと言っていたっけ。どれになろうが何になろうが、味の違いはそこまでわからないけれど。申しわけないが。


「今日も、お泊りコースかなぁ?毎回ごめんね」
「どうして謝るのですか?」
「え、だって…」


ちょっと遊びに寄っただけで、泊り。迂闊に頻繁に来る私も私だけれど、泊まれる事自体は嬉しい。菊と一緒に居れるから。私が遊びに来ると、よくアルやアーサー、ヨンス達も遊びに来る。騒がしくなるし、ご飯の用意とかもあるのに。食料云々をアル達に送ってもらうという考えは無い。ちら、と菊を見れば何時も見てる優しい微笑をしてた。あ、れ…?菊って、こんな風に笑うっけ?


「私は貴方を慕っていますから、一緒に居れて嬉しいのですよ?」
「……っ!」


菊からの思いも寄らない言葉に時期外れだけれど、もみじくらい赤く顔は染まってるんだろうか。あつい。こんな素敵な思いが出来るなら、雨が降るのも良い…かもしれない。





        (ずっと、もっと、一緒に居れる様に!)






(今回も神様は私の願いを叶えてくださいました)(へ?どういうこと?え?え?)(貴方を帰したくないので、雨を降らせて頂いていました)(雨は菊の所為だったの!?)(えぇ、皆さんお優しいので一緒に居させてくださいます)(空梅雨だったので水不足も解消できて丁度いい、とも仰ってますし)(菊には負けるよ…)(私が愛してるのは貴方だけですからね)(………っ!!!)




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捧げ物を加筆修正。
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