平和なのだと思う。日々合戦の中を歩いていくことも、巻き込まれることもなく。殺し合いをすることもなく。命を狙われることもなく。この平和が、暇だと、思う。思ったから何かしようと考える。考えた末にマニキュアでも塗ってみようかという結論をはじき出した。保管ケースを戸棚から取り出し、どの色にしようかとガチャガチャ広げて行く。ローテーブルの半分以上がマニキュアの瓶で埋まった。色とりどりで似合う色から似合わない色まで。同じような色もある。どの色にしようかと考えながら手に取る。手にとっては他の物と入れ替える。

この色にしよう。と決めた色だけを残して他は箱にもどして、ペタペタと少し伸ばした爪に薄ピンクを塗っていく。元の色とあまり変わらないために大きな変化は見受けられない。塗ってるとばれないので好都合だけれど、少し物足りない気にもなる。半分位は保護のために塗っているのだけれど。ラインストーンでもつけてみるか…。家に在庫がないので買ってこなければならないということに気づいて、すぐその考えをあさっての方向に捨てた。余計なことをして指導されるなんて面倒だ。

自分の爪が乾いたのを確認してから「こっちおいで」と手招きをすると素直に彼はとてとてとやってきた。彼、と言ってもトラ柄の白い猫だが。喋るけど。雄だし。目の前まで来た彼の手を取り、さっきまで塗っていたものを彼の爪に塗る。あ、肉球気持ちいい。


「……なんですのん?」
「マニキュア」
「それはわかってますわ」
「あ、克が喋るからはみ出たじゃない」
「それはワイのせいやないで」


猫の爪からはみ出したら毛がべとべとでかぴかぴになるのに。はみ出した分を乾かないうちに拭い取り、綺麗に塗りなおす。この子にはピンクか紅色かとも思ったが、黄色だ。虎柄だし。


「海やんにも塗ったんか?」
「いや、あの子には必要ないから」
「なんでワイだけ!?」
「それは克が克だからよ」
「意味わからんて!」


またぎゃいぎゃいと克が騒いだために爪からどっぺりとはみ出してしまった。ので、でこピンを一発入れて大人しくさせる。はじめから大人しくしてくれればいいのに。いや、大人しくしないから克なのかもしれない。虎だけど。よくわからない持論を持ち出してしまいよくわからないままに、また克の爪にペタペタとマニキュアを塗った。

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