家を出て数十メートル歩いたところで「けーちゃん、けーちゃん」と自分を呼ぶ声がした。振り返れば斜向かいの幼馴染が自分の存在に気づいて声を上げたようだ。ブンブンとカバンを持っていない方の手を振っている。とても嬉しそうに。実年齢よりも幼い感じで笑う。


「おはよう」
「おっはよー!けーちゃん今日は朝練ないの?ないの?」


朝の決まった挨拶をして、幼馴染を待つわけでもなく再び歩を進める。行き先は特に決まっていない。行き先は自分の足元に居る生体の気分次第だ。わん!と一回哭いてグイグイと先に行こうとする犬を引っ張り返す。幼馴染は小走りでぴょこぴょこと言う音がぴったり合うように後ろをついてくる。平均より少し身長が低いために余計にそう言った雰囲気を醸し出した。


「けーちゃん、次の試合はいつ?」
「練習試合なら休み明けにあるぞ」
「見に行っても良い?」
「他校生は侵入不可」
「ぶーぶー」


中学生で練習試合にすら見学に来れないということに口を尖らせて抗議をする。俺に言われても困る、と思ったが、まぁいつもの一連の流れなので気にも止めないことにした。歩くスピードが落とされ、思うように勧めなくなった犬が、前に進ませろと抗議するかのようにまたぐいぐいと引っ張る。それをまた黙らせるようにリードをぐいっと引っ張る。何かモノ言いたげな目を向けてきたが、犬のくせにと切り捨てる。


「けーちゃん、そういえば朝練はー?」
「お盆の帰省時期は部活も休み」
「そうだったね」


忘れてたーって少し照れたように隣で笑う幼馴染。「そんなことも忘れるなんて、俺と同じ学校には入れないな」と頭をぽんぽんと撫でるように叩くと、「大丈夫だもん!けーちゃんへの愛で入試なんて乗り切ってあげるんだから!」と胸を張って主張した。愛の力って言うやつがどこまで入試に通用するのかというのを証明してもらおう。「楽しみにしてる」と笑うと「任せといて!」と幼馴染が笑って「わん!」と犬が吠いた。




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