まさかここまで怒るとは思っていなかった。目の前には多くはないが黒いオーラを放っている雁夜。あまり怖くない、などと思うのは私が彼に対して盲目が入ってきているだけだろう。

彼が怒っている理由は、頼まれて彼の姪っ子と彼に秘密で出かけたことだ。彼女がサプライズで何か贈りたいと言ってたから秘密にしていたのだ。サプライズする前にバレた結果がこれであるが。けれど、プレゼントはデレデレで喜んでいた。要するに、彼は姪っ子が好きすぎる。ろりこん等と言われても否定できない。

謝りに謝り倒すと、やっと「……許してやらないこともない」と、彼は小声で言った。

それを聞いてほっとし小さく息を零す。言い方がちょっと気になるけれど、彼を怒らせたのはこちらであるために細かいことは言ってられない。彼が何に対して怒っているのか理解しきれている状態ではないが。怒ってることだけはわかった。


彼のあまり動かない左手をとり「では、明日は私とデートしましょう」と微笑みかける。数拍の後に、少し呆気に取られていた顔が赤くなった。

「……い、行くわけないだろ!?俺は桜ちゃんと行きたかったんだ!」

ぽこぽこと怒る彼を軽く無視し、抱きかかえると何処に行こうかと考えた。うまく動かせない状態で、放せと抵抗するのが愛おしくて少し力を込めて抱きしめる。完全に身動きがとれなくなると、もごもごと何か言っていたがそれも直になくなった。諦めたようだ。自分の腕の中で大人しく抱き込まれている暖かいモノにすり…と頬を寄せる。

さて、何処に行こうか。買い物は今買っておかなければならない物が特に思い浮かばないし、動き回らねばならない場所は負担になるだけだろうか。まぁ、私は彼が一緒なら何処でも良いのだが。




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