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すぅ…っと、瞳を開く。映るのは馴染み始めていた白い天井。あぁ、生きてる、なんて静かに思う。あのまま意識を失って、そのまま逝ってしまうかと思ったから。ふと、自分の手に違う感覚を覚える。気怠い身体を動かせずに、首だけ動かしてみる。動かしてる時に、手を上げればよかったな。と思うも、まぁ気怠いし、という考えに後で至った。
動かした視界に映る不安そうな佳典の顔。よかった…と呟いて彼は手をぎゅっと握った。その手の中に自分の手があるのだと、だから暖かいのか、とぼんやりと思いながら、おはよう、と口にする。はっきりと聞こえたのかはわからなかったけど、彼は嬉しそうにおはようと返してくれた。それだけで、嬉しくなる。生きてれていて嬉しい、と。
少し話をして、背もたれを起こしてもらい体重を預ける。寝転んだままだと窓からの光で逆光になりうまく顔が見れなかったから。見ると、ベッドの正面には箱がたくさん積み上がっていた。まだ、早いのに、なんて思う。部屋を一度見渡し、暖かな存在を確認して、窓の外を見る。前に見たときよりも明るくて、綺麗な晴れ間が広がっていた。「ねぇ」と声をかけて、今一度彼の手を握る。暖かい。
「いま、どんな気持ち?」
「……そうだな――…」
と、彼は言葉を選び始める。うーん、と考えて
「“泣きたくなるほど、幸せ”…です」
と形にして、彼は少し恥ずかしそうに笑った。そんな彼が愛しくて愛おしくて、なんだか、私まで泣きたくなった。
「……なら、“二人で泣こう”?」と、言って、どちらからともなく重ねたと同時に、大きな音が病室に鳴り響く。慌てて彼が私の代わりに、それをおぼつかない手つきで抱きかかえてくれる。その姿がとても微笑ましかった。
「……これからも、よろしくね。パパ」
笑いかける私に、彼は、こちらこそよろしく。ママ。と笑った。
幸せの結晶。
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