ツッキー | ナノ



教室で聞き耳を立てていたわけではないけれど、偶然に、そう、偶然に!月島の誕生日を聞いたのだ!




新学期の今日から行くと、もうあと3週間くらいしかないじゃないか。いや、時間で計算するとある。まだまだあると言える。けど、3週間か…。学生の3週間などあっという間じゃない。今から計画を立てなければ。
でも、私と月島はプレゼントを渡すくらいの仲の良さではない。かと、言って無視できるくらい良くないわけでもない。
クッキーくらい作れば良いだろうか。クッキーは作るのも比較的簡単だし、捨てるにしてもそのままぽいと簡単だ。捨てられることを前提で作るのは、すっごく嫌だ。なぜ捨てられると思ってしまったのか。日頃の月島の行いからだな、とひとり納得してみる。もう少し愛想よくしてみれば良いのに。

考えて考えて、めんどくさくなった結果。…よし、それならば捨てられないように好きなものでも作ればよいじゃないか!
しかし、月島の好きな食べ物は一体なんだろう。心の中で首をひねる。月島情報通の山口くんに聞いてもいいけれど。山口くんはずっと月島の情報引き出そうとしてる女の子に疲れているだろうし。ここは本人に聞いてしまう方が楽だろうか。回りくどいことをしなくても良い分、楽だろう。私は考えることを放棄しやすい性格だ。




「好きな食べ物何?」
「……は?」

朝一で唐突な質問に月島は眉間に思いっきりシワを寄せながら、間抜けな声を返してきた。そりゃそうだ。天気イイねだとか、おはようも無しに好きな食べものを聞かれたら私だって、は?と聞き返すレベルだよ。しかし、この男は簡単に教えてくれるだろうか。教えてもらわないと困るのは私であり月島だ。

「だから、好きな食べ物何?」
「……答えなきゃダメなわけ?」

どうやら答えたくないらしい。これみよがしに、ため息までつきやがった。別に私は彼が何が好きでも対して問題ではない、作れるものであれば。ちゃんとした食べ物の範囲内であれば。が、学校に持ってきても大丈夫なものであれば。もし月島が変人でシューレストレミングが好きなんだとか言わなければ。あれは空輸は禁止で、屋内での開封も禁止レベルの殺人食品だし。流石に日本人で好きな人などいないとは思っているけれど。

「ダメなわけ」
「なんで?」

月島の眉間にさらにシワがよる。痕が付きそうなくらいだったので指で伸ばすと払いのけられた。女の子に手を上げるなんて、痛いじゃないか。はじかれた手を冷やすようにぷらぷらと振る。ひどいなぁ。

「答えなくてもいいけど、答えないと3週間後あたりに顔面がバラエティでよく使われるパイでべっとべとになることになるよ。それでも良い?良いなら全然構わないんだよ?」
「…………――キ」

流石に顔面パイは嫌で観念したのか、蚊の鳴くような声で答えた月島に思わず笑みが溢れる。またなんと可愛らしいものが好きなのだろうか。あぁ、これはとびっきり美味しいショートケーキを用意しなければ!しかし、秋はいちごの旬の時期を完全に逃している。もうちょい先だ。これは作るよりも買ってきた方が良いのかもしれない、か…?と、思うけど、ちょっとなんだろう。いいや!作って持ってこよう!帰りに材料を買いに走らなければ。




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