こてん、と身体を預ける。背中から伝わってくるものが暖かい。このまま何もかも伝われば良いのに。などと思うのは男らしくないことだな。言えてしまえば良いだろうけどな。それはいけないことだろうと、飲み込んで奥深くにしまいこんだ。



俺と花宮は一緒にいることが多かった。意図的に一緒にいたのだが。クラス内でも一緒だし、大体何をするにも花宮と一緒だ。中学の頃から一緒だった気がする。もうその時から、なんという間柄といえばいいのかわからなかった。時々古橋たちと一緒にいるときには俺は一緒にいない時もあるが。それでも、その内側に花宮は俺を入れようとした結果。あいつらとも一緒にいることも多くなったのだが、圧倒的に花宮と一緒であることのほうが多かった。結局、花宮がいれば良い。ということなのだ、俺の中では。

けれど、花宮は俺に練習も試合も見せてはくれない。見せようとしない。元から練習を見学させる感じのバスケ部ではなかったが、花宮がキャプテンと監督を兼任するようになってからは、拍車がかかったかのように徹底してバスケ部から俺は排除されている感じがする。なぜだろうか。
試合の日程はおろか、試合があることすら教えてくれない。練習試合ですらも。何もかも終わったあとに「昨日の試合勝ったから、家行く」としか言わない。信用されていないのか、見せたくないのか。よくわからないけれど、この時だけは一緒にいるのに一緒ではないかのようだ。

けれど、花宮の言うことも行っていることもきっと正しいので、愚かな俺にはわからないだけなのだろう。それが正しいのか正しくないのか、間違っているのかどうかなどどうでもいいのだ。俺の花宮が正しいと言えば、それは俺の中では正しいのだ。世の中、世間様が間違っていると言ったとしても。花宮が、正解だと言えば、それが正解で疑いようのない真実なのだ。


(何かは盲目とは、何だったか)、などと思う。けれど、男同士でそんなものは気色悪いと拒絶されるだけだろう。俺を受け入れてそばに置いてくれている花宮も、そこまで、すべてを受け入れて抱き込むことなどしないだろう。だから、このまま。何も言わないまま。ずっと。

たとえ、互いに上っ面に外面しか見せていなかったとしても、傍に居たい、共にいきたいと願ってしまったものだから。本質などどうでも良いと思うのだ。俺が今の状態のまま花宮を愛せて花宮が俺を愛してくれるのであれば。そこに何の問題もありはしない。
結局、俺は花宮に何もかも与えられている気がしてやまない。そして、この与えられていることが終わることもなければ、何も与えれることはないのだろう。だと、するのであれば。

くっつけたままの背中から「なぁ、いつか一緒に死んで?」と。俺の言葉に花宮は驚くでもなく、言葉につまるわけでもなく。俺が今このタイミングでこのセリフをいうのをわかっているように即答した。
「バァカ。俺が殺すまで一緒に居ろ」と。「ははは、喜んで」泣きそうになるものを全て押さえ込んで笑ってみせる。花宮の中で不要になれば花宮の手で終わりを告げるということになるので、本当に不要と思われるまで俺は何の疑いもせずにそばに居れば良い。明確に確実で確固たる名目を得られてしまった。


「あ。殺したら、追いかけてくる?」
「誰が逝くか」
「なんだよ、殺して終わり?」
「当たり前だろ。お前の死体処理誰がするんだ」
「お前も一緒なら、えっと…今吉先輩、だっけ?がしれくれそうじゃん?」
「…………」
「そこまで嫌な顔すんな」
「するだろ。あいつの世話になるならお前抱いたまま海に身投げする」
「おお、それも良いな」


君の望むままに。
            (共に生きて共に死ぬ)


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