部屋で書類(所謂報告書)の整理をしていたら、ガチャリと扉が開かれる。その直後に襲いかかる小さな衝撃。あぁ、鍵かけとけばよかった。


番外編*


私の部屋には大きなクローゼットとベッド、そしてテーブルしか家具らしいものはない。椅子なんてものもない。必要があると思っていないので撤去してしまった。家電でクーラーと小さな小さな冷蔵庫、それも500mlのペットボトルが4本入ればいい方のとても小さなものがあるくらい。すっきりしている。言ってしまえば女の子の部屋らしくない。必要最低限の物しか部屋にはないのだ。


椅子が部屋にないため、ベッドに腰掛ける。そのためベッドのすぐ近くにテーブルが置いてある。そのテーブルに今日も書類を積み上げて、ベッドに座っている。ベッドも所謂キングサイズとドでかい。無駄にでかい。3人くらい余裕で寝転べるんじゃないの?私はそんなでかいの要らないと言いシングルを頼んだのに、いつのまにか書き換えられたらしい。きっと書き換えたのはルッスだ。お金は無限にあるわけじゃないんだから少しは節約ってものを知ってほしい。しかし…


「…暑い。」
「俺は暑くない」
「私は暑いの。離れて」
「やだね」
「絶対ベルも暑いでしょ!」
「王子だからそんなことないもんね」
「嘘言うな!」



そう言って私に抱き着く自称王子ことベルフェゴール、通称ベルは漂々と言ってのけた。私は座っているが、ベルは寝転んで抱き付いてきている。まぁ、腰巾着的な?ちょっと違うか…。あと本当に王子らしいけれど、出身だとか諸々の情報は知らない。私も言ってないことだらけだし、そんなこと気にする連中じゃないから今更言うこともない。

しかし、どうして真夏にこいつは引っ付いてくるのか!(あれ?真夏だけだっけ?春には眠いから、秋にはお腹がすくから、冬は寒いから…。あぁ、こいつに季節は関係なかった…理由もちゃんとした理由でもなかったし。我が儘にも程がある…)

そりゃ気温よりも体温は低いですけどね!気温39度って何よ、殺す気!?こういう時に限ってクーラーが故障している。修理は明日だか明後日だか言っていた。もっと早く直しなさいよ…今すぐ直しにきなさいよ…。

ちょっとでもマシになれば…と、窓を開けているが如何せん今日は風がない。空気の周りが悪くて暑い。更に引っ付いている分、風の通りは悪くなるわけで余計に暑い。その上、自由がきかない。書類も片付かない。暑い、暑い!

暑いとイライラしかしない。イライラしてると暑くなってくるし、作業がうまくいかない。作業がうまくいかないと更にイライラしてくる、悪循環だ。


「あぁ、もう!何よ、あんた!人の邪魔して楽しいわけ!?」
「王子だから、邪魔なんてしてないし」
「本人にその気がなくても当事者が邪魔だと思ってたら邪魔なのよ」
「…あっそ」


暑いし仕事出来ないし、引っ付いてるベルをべりべりと剥す。剥してもすぐにべったりしてくる。剥しても剥しても。私は諦めて小さくはぁ、と溜息をつく。ベルは諦めたのが分かると嬉しそうに更にべったりしてきた。


「なんで今日に限って私のとこなのよ。マーモンは?」
「マーモンは今日任務」
「レヴィは?ルッスは?スクは?ついでにボスは?」
「任務と買い物と任務。ついでに、機嫌悪いのと」
「…つまり、屋敷に遊び相手は私しか居ないわけね」
「そゆこと!」



私は他のメンバーが任務だろうがオフだろうが関係なしに私は私のことをする。一人暇してようが、ぎゃーぎゃー騒いでいようがどうでも良い。ただ、此処に属していれば求めるものが手に入るような気がしたから居るだけで。繋がりを持ちたがるなんて、まぁ、暗殺とか血みどろくさいことしてる人間には不釣り合いだろう。ベルの場合はわからないでもないが。双子の兄を殺した餓鬼。まだ何かに縋らねばならないはずの年齢。


「今、二人しか居ないんだからさ」
「ん?」


【もっと俺に構えよ】

(そういうベルは年相応に見えた)













((暗殺部隊とかに入ってるけど、まだ14歳だもんねー…))
(あ、今なんか俺にとって嫌なこと考えたろ)
(え?そんなことないわよ)(ぜってー嘘だ!)
(そんなこと言うならもう遊ばないんだからね)






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