暖かな陽気が心地良い、麗かな午後のこと。
ギグルスとペチュニアはカフェテリアでお茶とデザートを楽しみながら、未だ訪れない友人たちを待っていた。
「フレイキーたち、遅いわね」
ギグルスがストロベリーオレをストローで掻き混ぜながら言う。その隣でアイスミルクを飲んでいるペチュニアが器から口を離し答えた。
「あの二人だから寝坊とかは考えにくいし、何かあったのかな?」
この街ではとにかくトラブルが頻繁に起こる。人為的なものから天災や動物に襲われるようなものなど様々だが、毎日のように起こる何かしらの事件は彼女らにとってはすっかり慣れっこだった。
しかし何か困ったことが起こったのであれば助けに行ってあげたい。もう既に何か被害が発生したり怪我人や死人が出ている可能性も高いが、じっとしているのも落ち着かない。二人は迎えに行こうかと腰を上げかけたが、その時、丁度聞こえてきた声に振り返る。
「ギグルス、ペチュニア…!ご、ごめんね、遅くなって…」
息を上げ走ってきたのは待ち合わせをしていた二人の友人の一人であるところのフレイキーだった。その後ろから少し遅れてもう一人の友人であるラミーがとぼとぼと着いてきているのも見える。
ギグルスとペチュニアはそんな二人の様子に首を傾げつつもとりあえず席を空け、二人を座らせた。
「二人とも、何かあったの?」
ペチュニアがメニューを渡しながら尋ねる。するとフレイキーはいつもおどおどとしている彼女らしく、伏せ目がちに上目遣いをしながら説明を始めた。
「あ、あのね…えっと、ラミーとこっちに向かってる途中、その、ピクルスさんが…」
その名前にギグルスとペチュニアはああ…と内心同じ考えに行き着いた。
ピクルスとはラミーにしか見えない執事の名前だが、ラミーは嘘をつくような人間ではないため皆その存在を認識している。執事というからには彼女を世話し見守る存在なのだろうと思うが、実際いつでもラミーに付き添っているらしいのだが、彼はとんでもないトラブルメイカーなのである。彼あるところに猟奇殺人事件ありと言っても過言ではなく、とにかくピクルスがいれば(つまりラミーがいれば)周りにいる人間が何かしらの理由で死ぬのだ。それはピクルスが手を下したためであったり、別の理由であったりとケースによって色々なのだが、彼女が外を歩いたということは今回も何かしらの事件が起こったのだろう。二人はその犠牲者に心の底から同情した。
「で、巻き込まれたのは?」
ギグルスの質問に俯きながらフレイキーは言う。見てきたものを思い出してしまっているのだろう、その顔は少し青くなっていた。
「カドルス」
((ああ…))
またしてもギグルスとペチュニアの心の声がシンクロした。流石死亡回数No.1を誇るカドルスだ。今回は何死なのかはわからないが、哀れな彼に同情を更に深める。
「ごめんなさい…」
すると、三人の沈痛な空気を受け取ったのか、それまで俯いて黙っていたラミーがぽつりと呟いた。三人が顔を上げると、ラミーは震える手で顔を覆い掠れた声で言葉を紡ぐ。
「わたしが外に出たせいで…カドルス君を巻き込んでしまって…次はフレイキーさんたちまで傷つけてしまうかもしれません、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…」
地の底から響くような暗く淀んだ懺悔を聞いた三人は慌ててフォローを入れる。
「ラ、ラミーのせいじゃない…!その、ピクルスさんはラミーの執事かもしれないけど、だからって、ラミーが自分のせいって抱え込むことないと思う…」
「そうだよ!詳しい内容はわからないけど、ラミーは何もしてないんでしょ?一緒にいたフレイキーが証人なんだし、責任を感じることないよ。カドルスには後であたしたちと一緒に謝りに行けばいいしさ」
「それに、もしこれからピクルスさん絡みで何かあったとしても、私たちはそれをラミーのせいとは思わないわ。そもそもそういうことを全部ラミーが原因って切り捨てるなら、私たち、ここにあなたを招待しないわよ」
三人それぞれの励ましにラミーは顔を覆っていた手をそろそろと下ろしていく。見えた表情は今にも泣きそうだったが、ラミーは一つ鼻を啜り、笑顔を作った。
「…ありがとうございます、皆さん…。せっかく誘っていただいたのに、初めから水を差してしまってごめんなさい」
その言葉にギグルスたちは揃ってにっこりと笑顔を作った。気にしなくていいという意味を込めたその3つの笑顔に、ラミーは今度こそ本当の微笑みを浮かべる。
気を取り直し、注文を終えたフレイキーとラミーを見ながら、ギグルスは頬杖を付き口角を上げる。今日の目的は所謂一つの「女子会」である。この街の住人はそれぞれがそれぞれの交友関係を作り日々遊んだり仕事に励んだりしているが、意外と女子メンバーのみで遊ぶということは少なかった。今回はそんな女子組だけで集まり、女の子にしかわからない悩みや喜びなどを語り合おうという訳だ。
女子トークといえばまずは恋バナである。 この中で一番恋愛に興味のあるギグルスが先陣を切った。
「ねえねえ、フレイキーって最近どうなの?フリッピーとは」
「ふぇ!?ふ、ふりっぴー…?」
ギグルスのニヤニヤ笑いにフレイキーは運ばれてきたココアを両手で包み込みながら肩を揺らす。途端に赤くなる顔にどうやらうまくやっているようだと内心で察しつつその姿を見つめた。フレイキーはその視線を受け止め、もじもじしながらも口を開く。
「え、えと、普通だよ…?こうやって一緒にお茶したり、フリッピーのお家でお話したり」
「まあそうよね。フリッピーって覚醒さえしなければものすごい紳士だし。それにフレイキーを大切にしてるの傍から見てても伝わってくるわ」
ギグルスの言葉にフレイキーは更に真っ赤になっていく。しかし何か感じるところがあったのか、ぱっと顔を上げ、続けた。
「覚醒しても、優しいよ。た、確かに乱暴になるし、ちょっと怖いけど…だからっていつも誰かを傷つけたりしてるわけじゃないんだ。この前だって、一緒にお料理したよ」
「え、覚醒さんって料理するの?意外!」
驚くペチュニアにフレイキーはうん、とはにかむ。覚醒の良いところを知ってもらえて嬉しいのだろう。その様子に三人は思わず心がほっこりするのを感じる。
「軍で食べてたやつらしくて、あんまり…その、見た目の素敵なやつじゃないけど…。この前は熊鍋作ってた」
…前言撤回。三人はそっと目配せをし、同じことを思ったと確認し合う。
お菓子などを作っていたとは考え難かったが、軍用料理などどう考えても彼女と作るのには適さないだろう。使う食材も現実ではあまり考えられないようなものもあるはずだ。というか、フリッピーって熊じゃなかったか。
「ち、ちなみに、それ作った時フレイキーはどうしてたの?」
そんな脳内会議を経て、ギグルスが代表となって恐る恐る聞く。フレイキーは少し首を傾げると、恥ずかしそうに答えた。
「食材集めの時、生きてる熊さんを目の前で闘って狩ってたから、怖くて気絶しちゃったけど…。でも起きたらちゃんと完成してて、すごくおいしかったよ」
些かずれている返答に三人はまたしても同じことを考える。何してんだあの野郎。意気揚々と熊狩りをしている覚醒フリッピーの姿がまざまざと連想され、三人はフレイキーには気付かれないようこっそり溜息をついた。
「ラミーはどう?シフティと付き合ってるんだっけ」
話題を変えようとギグルスがラミーに矛先を向ける。ホットミルクティーを混ぜていたラミーは突然話題を向けられぱちくりと瞬きをしたが、ふわりと笑顔になって言った。
「付き合ってるなんて、そんな…。シフティさんは良いお友達です。この前、映画を観に連れて行ってくださいましたし」
その時を思い出しているのだろう、花の咲いたような柔らかな表情を浮かべるラミーはとても可愛らしい。しかし彼女の言葉通り、本当に良い友人だと思っているのだろう。だがギグルスとペチュニアが思うにはシフティは完全にラミーに惚れている。あの双子は盗賊であるため優しい振る舞いなどほとんどしたことがないが、シフティはラミーといる時は普段見たこともないような穏やかな笑顔をしているのだ。何かにつけラミーのところに行っている姿も見かける。
シフティ、ドンマイ…と思うギグルスとペチュニアとは違い、そうした男女間の心の機微にいまいち疎いフレイキーは素直に「へー、いいねえ」などと頷いている。それに「はい」と答えるラミーで二人の間にはほわほわしたオーラが漂っていたが、ギグルスは一つ気になることがあって尋ねた。
「でも、映画なんか観て大丈夫なの?財布とかすられたりしてない?」
その問いにラミーは不思議そうに瞬いた。彼女もシフティが盗賊であるということは知っているはずなのに今一つ理解できていないような反応をする。首を傾げるギグルスにラミーはふふっと笑った。
「はい、大丈夫です。シフティさんと一緒にいて何かを盗られたということは一度もありませんし…それどころか、シフティさんは良くわたしに贈り物をしてくださるんですよ」
は、とラミー以外の全員が耳を疑った。あのシフティが他人に贈り物?まるで想像のできない事実に唖然となる三人に対し、ラミーは笑顔のまま続ける。
「この間は素敵な真珠のネックレスをいただきましたし…高価なものも多いので、いつも申し訳ないと思って断るのですが、俺が貰ってほしいから、って仰って…。ですから、せめてものお礼となればと思ってお茶をご馳走させていただくんです。シフティさんはお話がとてもお上手ですから、ティータイムをご一緒させていただくのがいつも楽しくて」
いや、絶対それが目的だろ。と再びギグルスとペチュニアの心の声が一致した。どう考えても好きな女の子に貢ぐ恋する男子だ。しかし、幸せそうに話すラミーからは恋の雰囲気など微塵も感じ取れない。異性で仲の良い友人ができて嬉しがるお嬢様そのものといった感じである。二人は普段困らされてばかりのあの盗賊に今日だけは同情しようと思った。ラミーは心優しく愛情の深い少女であるが、箱入り娘であり些か天然で世間知らずなところがあるので、想いが届くのはそう容易いことではなさそうである。
次にギグルスは隣に座るペチュニアの話を聞こうと身体を向けた。
「ペチュニアはどうなの?ハンディとラブラブなんでしょ」
この街一番のおしどりカップルといえば誰もがハンディとペチュニアの二人を思い浮かべるだろう。ギグルスはペチュニアと良く一緒に遊ぶため二人が本当に仲が良いのを知っている。ペチュニアはあたしかあ、と呟くと頭を掻いた。
「そうだねー、ハンディはすごく格好いいよ。あたし、いつもハンディに助けられてばかりでさ。あたしよりよっぽど不自由なはずなのにそんなことちっとも感じさせないし、気遣ってくれるし、ハンディに出会えてすごく幸せだな」
照れたように笑うペチュニアにギグルスは心が暖かくなる思いがし、同時に二人がとても羨ましく思えた。フレイキーもふおお、と目を輝かせて話に聴き入っているし、ラミーも素晴らしいですねと頬を染めている。この街にはたくさんの住人がいるが、二人の間に入っていける者などいないのではないかと思えるほどお互いに愛し合っているのがわかるペチュニアの様子に、ギグルスはふっと笑う。
「ペチュニア、ハンディといる時だけは発作が出ないものね」
重度の潔癖症であるのがペチュニアの最大の特徴であるが、大工を生業としており汚れが付き物のハンディといる時だけは何故かその症状が出ないのである。本人もハンディも周りも理由は知らないが、愛の力だろうと住人全員が暗黙の了解の如く思っていた。ペチュニアはハンディに関するものなら決して汚いとは思わないし、ハンディもペチュニアと会う時はできるだけ彼女が嫌な思いをしないよう身支度を整えている。そんな二人の思いが通じ合っているのだろう、とギグルスだけでなくフレイキーもラミーも感じていた。
この二人に関しては悩みや不満などないように思う。互いに不自由な要素を持った二人であるが、どんな苦労も二人なら共に乗り越えていけそうだとギグルスとフレイキーとラミー、三人の意見は合致した。
彼女たちの尊敬とほんの少しの羨望が混じった視線に恥ずかしくなったのか、ペチュニアは「ま、まああたしたちはこんなところかな」と話題を変えようと試みる。
「そういうギグルスはどうなの?今誰と付き合ってるんだっけ」
不意に話を振られたギグルスは瞬きをしてペチュニアを見つめ返す。そして標的が自分に変わったことを理解し、その頬を僅かに赤く染めた。
「わ、私のことはいいじゃない。面白い話もないし」
ギグルスは動揺しているのか手を小刻みに振り、腰を引く。しかしここで逃がすほどペチュニアは甘くはない。フレイキーもラミーも浮いた話が絶えないギグルスの恋愛話に興味津々といった様子である。計6つの大きな瞳に見つめられ、ギグルスは視線をあちこちに彷徨わせた後に渋々といった雰囲気ながら口を開いた。
「…昨日デートしたのはスプレンディドさん」
紡がれたのは些か傍迷惑ながらも誰よりも正義感の強いこの街一番のヒーローの名前であった。ヒーローであるが故住人全員を平等に愛していそうな彼とどのようなデートをしたのか、気になったペチュニアは質問する。
「へー。ねえ、ヒーローってどんなデートするの?背中に乗せて空中飛行とか?」
「それもしたけど、上空からだと街の様子が良くわかって助けを呼んでいる人がより見つけやすいじゃない。あまり集中できないってことで、普通にショッピングしたりもしたわ」
「スプレンディドさんって、どんなものを買うの…?」
フレイキーの疑問にギグルスはそうね、と顎に指を掛ける。
「ヒーローって言っても普段は普通のサラリーマンだから、割と生活感のあるものを買ってたわ。トイレットペーパーとか洗剤の詰替用とか。でもあの人、ファッションセンスはあんまりないのよね」
「ああ…あの人普段着はほぼジャージだもんね」
何度か見掛けた休みの日のスプレンディドの姿を思い出しペチュニアが頷く。ギグルスは首を縦に振った。
「ダサいっていうより、センスを持ち合わせてないのよ。ジャージの他に持っている服といえばユニ○ロで買ったようなものばかりだし。お洒落に興味がないみたい」
「でも、生活用品を買い込むってきちんと自立されているのが伺えて素敵ですよね。ヒーローさんってお料理がお得意だと聞いたことがあります」
「そうそう。料理もお菓子作りも上手いのよ。…何か女子力で完全に負けている気がしてならないけどね」
ラミーの言葉をギグルスは肯定するが言葉の最後の方になると少しトーンが下がる。気にしているのだろう、落ち込んだ様子を見せる彼女にラミーは微笑みつつも励ましの言葉を贈る。
「ギグルスさんだってお料理がお得意じゃないですか。この間のバレンタインの時にいただいたチョコレート、とっても美味しかったですよ」
ラミーが言うチョコレートと同じものをギグルスは去年のバレンタインの時にスプレンディドに贈ったことがある。嬉しそうに食べてもらえたのだが、その一ヶ月後のホワイトデーにて、明らかに彼女が贈ったものより豪華で手の込んだ、そして高級洋菓子店で買ってきたのではないかと思うほどの美味しさを持ったフルーツタルトを返された時のことを思い出し、忸怩たる思いが胸中に去来する。しかしラミーはそういった経緯を知らないため、純粋にフォローしてくれている気持ちをありがたく受け取ろうとギグルスは「ありがと」とお礼を言う。スプレンディドだって、純粋に貰ったチョコレートが嬉しかったから精一杯手を込めてその気持ちを返そうとしただけのことだろう。ただ料理の腕はもっと磨こうと密かに決意をした。
「あ、てかさ、ギグルスといえばランピーじゃない。どうなの?付き合ったりしたことあるの?」
ふと思い出したようなペチュニアの台詞にギグルスはあからさまに眉間に皺を寄せる。同時に住人たちの中で最も背の高い、ピクルスと同じくらいトラブルメイカーの彼のことが脳裏に浮かんで首を横に動かす。
「ないない、全くタイプじゃないもの。それにあいつ、変態だし」
ギグルスといえばランピー、などというイメージを持たれることも、フレイキーもラミーも揃ってああ、と納得した顔をしているのも非常に心外である。けれど親の仇でも思い浮かべたような表情をするギグルスにフレイキーはこてんと首を折った。
「そうかな…?ランピー先生、ぼくはすごく格好いいと思うな…。それにギグルスのことすごく好きなんだなって、感じるよ」
「フレイキーはあいつの本性を知らないからそう言えるのよ。あいつ、馬鹿で鈍感なだけじゃないんだから。一度あいつの家に監禁されてみなさい、寒気がするわよ」
ギグルスにとってランピーとの関わりといえば部屋に盗聴器を仕掛けられたり、寝込みを襲われ彼の家に拉致監禁されたり、会うなりセクハラまがいのスキンシップをされたことくらいしか思いつかない。一見嫌がらせのようにも思うが、彼はギグルスといる時だけは常に嬉しそうに笑っているのである。フレイキーもペチュニアも言う通り、自分のことを好いていてくれているのは理解できるが、やり方が異常な上に彼は全くギグルスの好みに嵌らない。だから何をされても正直迷惑なだけだという訴えは何故かペチュニアたち女友達には聞き入れてもらえないのだ。
「それだけ好きってことだよ。愛されてるじゃない」
うりうりとペチュニアから肘で小突かれギグルスは乾いた笑いを浮かべる。反対側の隣にいるフレイキーもそ、そうだよ、とどこか力を込めて同意した。
全くもってどうして彼が彼女たちから支持されているのかわからない。ランピーにも良いところが一つはあることくらいギグルスも同意したいが、とはいえ二人は彼に甘すぎる気がする。納得いかずむくれるが、ラミーが急に思い出したように手をパンと打ち鳴らしたのを見て我に返る。
「そういえば、今年もまたバレンタインが近付いていますよね。四人で何かお菓子を作って、皆さんにプレゼントするのはどうでしょう…?」
バレンタイン。プレゼント。その甘い響きにラミー以外の三人は「賛成!」と声を揃える。去年のバレンタインはギグルスとペチュニアは二人で一緒にチョコレート作りに励み、フレイキーは不器用なため店で買ったものを皆に配り歩き、ラミーに至っては去年までバレンタインというイベントそのものを知らなかったため、四人で作るのは初めてである。三人寄れば文殊の知恵、四人集まれば千人力だ。皆で仲良くお菓子作りというのも楽しいだろう。元気良く手を上げる三人を見てラミーはにっこりと笑った。
「では、来週の日曜にわたしの家で相談しませんか…?お菓子もありますから、サンプルにもなると思います」
「オッケー!じゃああたし、去年使った型とか家から持ってくるよー」
「私はママ直伝のレシピ本がたくさんあるから持っていくわ」
「じゃ、じゃあぼくは、確か板チョコをいっぱい保存してたから持ってくる…!」
それぞれがそれぞれの役を提案し、そうして日曜の予定が決定した。顔を見合わせた四人は互いに笑顔を零す。何が起こるかわからない予測不可能な世界であるが、こうして再び四人での予定が立てられたことを、全員が喜んでいた。
少し気恥ずかしいような思いを乗せて、四人は今日は無事に一日が終われそうだ、なんて有り触れているが大きな幸せを噛み締めながらハイタッチを交わした。触れ合った手は暖かく、この熱をきっと忘れないようにと、きっと皆が胸に刻んだことだろう。
麗らかな午後のこと。こうして少女たちの秘密の時間がひっそりと幕を下ろし、そして新たな物語が幕を開けたようだった。



その後、ラミーのドジによりキッチンが半焼する火事が巻き起こったり、フリッピーに味の好みを聞きに行ったフレイキーがうっかり躓いて彼を押し倒してしまい、その衝撃と興奮で覚醒が現れて色々と大変な事態に発展したりするのだが、それはまた、別の話。



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