触れ合って、キスをして、頬に、首に、鼻に、相手の温もりを感じる。ちいさな口付けのあと、背中には床の感触。離され広がった視界で瞬くと、ほんの少し眉を顰めた爆豪くんの顔がある。苦しそうな、何かを堪えるような、それでいて衝動に逸ってしまいそうな性急さも感じさせる。辛いの?私はその表情が見ていられなくなって、両腕を伸ばし、爆豪くんの首をそっと抱き寄せた。大丈夫だよ。ここにいるよ。離さないから。そんな気持ちを伝えたくて。一瞬だけ強張った身体は、やがて解れて私の頬に口付けをひとつ降らせる。
そのまま、ぎゅうと抱え込まれて、苦しいほどの圧迫感が襲ったけれど、全然痛くはなかった。温かい。すり、と爆豪くんの硬めの髪が擦れた。
「麗日」
爆豪くんの上半身が動く。抱き締められたまま、首筋を強く吸われて、思わず息が漏れた。ゆっくりゆっくり、降りてくる手は私のブラのホックに触れる。ぐい、と男の子らしい力の強さで引っ張られてしまえばいともあっけなく覆っていたものが外されてしまう。は、と息が聞こえた。
それは爆豪くんのものだったのかな。思う間もなく唇が私の唇に降ってきて、呼吸を奪われているのに胸元で動く手がとても恥ずかしい。いつもはこんな性急じゃなかったはずなのに。どうしたんだろう、と考えると唇が離れていった。
また爆豪くんの顔が見える。先程とは違ったその表情は、何と言うか、色っぽかった。肉食獣のような吊り目で見つめられて、身体の芯が震えるような錯覚を覚える。
爆豪くんの皮の厚い手のひらが、私の胸を包んだ。寄せたり、離したり、ふにふにと弄られて変な声が出そうになる。唇を噛み締めるともう片方の手がそれを阻止するように唇に触れた。
「我慢、すんな」
押し殺したような声だった。低く、顰められたそれはほんの少し、労るような響きも感じさせるから、私はうれしくなって、へにゃりと締まりのない笑顔を浮かべてしまう。すると爆豪くんは少しだけ目を見開いて、なんだよ、とゆるく笑った。何か面白かっただろうか。胸を触っていた手が片方伸びてきて、軽く頬を抓る。からかわれているのかもしれない。だけど爆豪くんは、ふいに真剣な顔になると私の胸の先端をつついた。
「ひゃ、」
咄嗟に零れた声に口を塞ぐ。反応した声、いつになっても慣れない。恥ずかしいし、淫らな女だと思われたくない。それでも爆豪くんはその手をそっと退かした。射抜くような瞳がじっと見つめてきて、あまりの恥ずかしさに泣きたくなる。我知らず湧き上がりそうになる涙を堪えようと必死になっていると、低い声が耳元に滑り込んできた。
「見せてくれ。麗日、か、かわ…いい、から」
嗚咽に変わろうとしていた声が喉元に突っかかった。褒めることに慣れていない、甘い言葉なんて一度だって聞いたことのないあの爆豪くんの口から、かわいい、って。押さえ付けようとしていた涙が、一筋伝っていった。なんで、反則だよ。そんなこと言われたら逆らえないのに。
口を覆っていた手をゆっくり外した。視界の先には珍しく赤くなった爆豪くん。自分で言っといて照れるとか、爆豪くんの方がよっぽどかわいい。だけど多分、口にしたら怒られそう。
相変わらず恥ずかしさは消えないけど、ちょっとだけ我慢をやめてみようと思った。淫らな女とは思われたくないけど、かわいいとは思われたい。私の頭の中は、今はきっとばかみたいに甘すぎて飽和状態になっているんだろう。だけどあんなこと言われちゃったら、仕方ない。そう思うことにした。
行為を進めようとする爆豪くんの髪に触れる。尖ったそれがとても愛おしくて、やっぱり、ばかになってしまっているみたい。もう、ろくに頭を回すこともできなくなった。
身体の緊張を緩める。受け入れたということが、ちゃんと伝わればいいんだけど。でも、その前に。
「爆豪くん」
魔法のような甘さをください。あなたが好きだと、それだけを考えて溺れていられるような魔法。ねだるようにその唇に触れると、微かな息が聞こえて、私の視界は再び爆豪くんで埋め尽くされた。



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