※微妙な性描写注意






シャツの下の肌をなぞる指先は想像よりも冷たかった。第2ボタンまで開けた先を緩く撫でるその感触に、今更のように背筋が震えた。
「河野は、もっと真面目だと思ってたんだけどな」
静かに落とされた呟きが、最後通告のようで、私は一瞬だけ目を閉じたあと、苦笑いを浮かべた。

抜き取られた指が苦しい。鎖骨に落ちる小さなキスの冷たさと、下腹部の熱さのアンバランスさに目眩がした。ぐぷ、と音を立てて私の中に入ってくる男の人のものは、太く脈打っていて、悲鳴を上げてしまいそうになるのを必死になって抑えた。すると力が入ってしまったことを知ったらしい先生がくしゃりと髪を撫でてくれる。私はその手の大きさに少しだけ安心した。
ベッドが小さく軋む。荒い息遣いがカーテンの中に谺していた。腰が跳ねて、そうしてこの行為の終わりが訪れる。額に前髪の張り付いた先生はいつもより、男性らしかった。
「河野」
身体を離し、後始末を終え、制服に着替えるとシャツだけを羽織った先生が呟いた。
「俺は女子高生が好きなことを認めてるが、節操なしと言われることは嫌いだ」
前を向いている先生の考えは読めない。黙って聞いていると、だから、とぽつりと雫された続きが耳たぶで跳ねた。
「同情や指導の気持ちでこういうことをするわけじゃ、ないからな」
先生は変わらず前を向いている。だから私は、どんな表情をしていいのかわからなかった。
慰めて、くれたのだろうか。教師にしては不器用すぎる先生は、人としてもあまり器用な質ではないのだろう。なにせお願いとあらば、私なんかの馬鹿な頼みごとでも聴いてくれるのだから。
知らず、笑いが漏れた。苦笑い以外の何物でもないそれは、私は一体何をやっているんだろう、という今更すぎる自問自答だ。そして先生も一体、何をやっているんだろう。考えると今現在のこの状況がとても滑稽で、小さく、声を漏らした。
「安田先生」
その音に振り返った先生に言う。
私は笑えただろうか。先程の苦笑ではなく、少しでも穏やかな、例えばレミのような明るい笑顔を。
「ありがとうございます」
先生の整った、男性らしく少し太い眉が僅かに歪む。その理由は、笑顔が下手糞だったからか、それとも別の理由からか。わからないけれど、私はそっと腰掛けているベッドのシーツを撫でる。真っ白なそれは、先程までふたりぶんの体温を支えていたとは思えないほど、酷く冷たかった。



ぼんやりとわたしはたたずむきっとしあわせになれただろうと
(虚勢を張る私の耳元で誰かが「馬鹿」と罵りの言葉を囁いた)


Thanks:heso



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