「あ、」「…あ」
ぽつぽつと水滴が葉を叩く音が辺りに響き始めた。
「やばいな、さっきんとこまで引き返すぜ」
「うん、」
僕らが迷ってしまってから随分しない内に、やはり雨が降り始めた。予想の範疇の出来事で、僕らは仕方なく先ほど見つけた木の根に空いた穴、つまり子供2人くらいなら雨宿りできそうな場所へ引き返した。

「レッド、濡れたか?」
「ちょっと…グリーンの頭に比べれば大丈夫」
へたりとしてしまったツンツン頭を笑ってやると、僕らは意外と大丈夫なことがわかった。既にこの状況でさえ、僕らは遊びの延長、旅への前線に置いてしまっているのだろう。
「……レッド、見てみ」
と、僕が服の端を引っ張って絞っている最中にグリーンが声を潜めて耳打ちをしてきた。なんだろうとグリーンの視線を追うと、コラッタやキャタピーなんかの小型のポケモンもここを雨宿りの場にしているのだろう。僕らがいることに少し驚きつつも恐る恐る近づいてきた。
僕もグリーンも研究所で遊ばせてもらったりなんかしているからポケモンには同じ年頃の子より慣れている。2人でへへへ、なんて笑い合って場所を空けた。するとこちらに敵対心がないことが彼らにもわかるのだろう。もしくはこれ以上その小さな体の体温を下げたくはなかったのか、まだ少しビクビクとしながらも穴の中へ入ってきた。
「可愛い…触っても平気かな」
「ううん……そっとなら大丈夫なんじゃね?」
そんな問答があって暫く僕はそろっと手を伸ばした。意外にもそのコラッタはびくりと一瞬体を強張らせたものの、すんなり撫でさせることを許可しくれた。
「そういえば、野生が敵対してんのは手持ちのポケモンだってなんかの本で読んだな」
ぽつりとグリーンが独り言でも呟くようにそう言ったのを聞いてそれなりに草叢に入っても真っ先に飛びかかって襲ってくるポケモンはあまりみないな、と納得した。

「よかったわ、こんなところにいたの?」
それから暫く、ポケモン達と戯れていたおかげでどのくらいの時間が経ったのかなんてわからないけれど、ふっと雨音だけが響く世界に優しい声が落ちてきた。
「ナナミさんっ」「姉ちゃん!」
桃色の傘を片手に穴を覗きこんで
「みんな心配してるわよ」とナナミさんは微笑んだ。昔から、僕らが遅くまで帰らないと必ず見つけてくれるのはナナミさんだった。何故かはわからないけれど。
「姉ちゃんありがと、ナゾノクサは?」
「おじいちゃんが見つけたわ」
「そっか!よかった!」

そうして僕らは、いつものように並んで帰るんだ。


旅にでる前に必要なこと


(高鳴る胸は)(無理矢理気づかないフリをして)






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