「ピカチュウ、おいで!」
レッドが楽しそうに一本の棒を持って海辺に小走りで向かった。その手に持っている一本の棒はさっきの民家でおじさんから貰っていたものだ。「釣りは好きか」と聞かれて「はい」と答えていたから、レッドはその釣り、が好きで、今からそれをしに行くんだろう。ちなみに僕は森から出たことがなかったから海というのは初めてだ。
「ピカチュウ、そこにいてね」
レッドは海までやってきて、堤防に座ると僕を横につけてその棒にくっついた糸を海に投げ入れた。僕がその糸を目で追って海を覗き込むと、レッドは「危ないよ」と一言注意をしてからピタリと動かなくなった。

待つこと数分。レッドが「あ、」と声を漏らした。僕が何だろうと思ってレッドの視線を辿るとオレンジ色のまあるい物体がぴくぴく動いていた。(さっきの糸の先についていたものだ。)それをレッドも確認したのか、ぐっと座り直してから棒についている取っ手をくるくると回し始めた。暫く回していると水面がバシャバシャと音を立てた。僕がびくりと飛び退くと同時くらいにレッドが立ち上がって棒を頭の上にぐいって引っ張った。

コイキング を つりあげた▼

「ピカチュウ、でんこうせっか!」
レッドの声に完全に海と真逆に走りだしていた足を踏ん張って踵を返して突っ込んだ。(レッドの声ひとつで勝手に体が動いちゃうなんて)
レッドは僕が弱らせたコイキングをボールに入れてから、それを抱えて、再び最初のモーションに戻ってしまった。僕はまたレッドの指示がくるまで尻尾で真似をしてみたり、海の中に居るまだ知らない影を眺めてみたりして、その日は海がオレンジに染まるまでずっとそうしていた。


釣り竿と海

1日を終えて僕は随分速く走れるようになった。


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コイキングは素早さ努力値+1らしいと最近覚えました


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