「よお、レッド!」
「グリーン、」
ハナダシティのちょっと先、大きな橋の前で向こうから歩いてきた誰かがレッドの名前を呼んだ。レッドもソイツの名前らしきものを返したから多分知り合いなんだろう。(なるほど瞳に綺麗な緑を持っていた)
「お前今来たとこか?俺はこの先にいるマサキってヤツにポケモンのデータ見せてもらってきたんだ!」
「へぇ…僕も、行ってこようかな…」
「行ってこいよ、岬からの眺めも結構よかったぜ?……っと、その前に…相手してくだろ?」
「もちろん、」
いつもより少し饒舌なレッドが珍しくてボクはボールを揺らした。そしたら、ソイツ、グリーンはボールを隔てたボクをちらっと見て、ニッと笑った。
「どんなポケモン捕まえたのか、見せてみろよ!」
グリーンの振り上げた腕からボールが飛び出して、ピジョンが出てきた。さっきのアイツの台詞と相性からして、ボクの出番だ!
「いいよ、こいつも喜んでるみたいだし」
レッドがボクの気持ちを代弁して、ボクのボールが投げられた。
ピッカ!1つ静電気のオマケ付きでピジョンの前に出る。「へえ、結構珍しいの捕まえたな!」なんてグリーンがレッドに言った。当然だ。ボクらは賢いから滅多に人に見つかるなんてヘマはしない!
「ピカチュウ、電気ショック」
レッドの指示が伝わる。少し弾んだ声で。

「あーあ、なんだよお前、電気鼠一匹で悠々と勝ちやがって」
「可愛いだけじゃないんだよ」
ね、ピカチュウ?と笑いかけてくれたレッドに精一杯力強く鳴いてみせて、ボールに戻される前に頭の上に避難した。結果はボクとレッドの四勝。グリーンのバトルはあんまりに力任せだった。
「あー…じゃあ俺はもう先に進むぜ?またな、次は負けねーから!」
グリーンのそんな台詞に忙しないヤツだなあとレッドの頭の上から見下ろしていると急に足場が揺れた。「えっ?」って、レッドが顔を上げたらしかった。(いつもはボクを腕に移動させてから動くのに)既に少し向こうまで歩いて手を振っていたグリーンはレッドの声にピタリと止まって戻ってきた。
「そーそー!これやるよ!ボイスチェッカーって言うらしいんだけど、まあ俺は他人の噂になんて興味ないからな!お前俺より進むスピードおっせーし、ちょっと進みやすくなんだろ!」
「あっ…ありがと……」
「じゃー、今度こそ行くわ!またな!」
いや、違ったらしかった。グリーンにレッドがあげた声は聞こえてなかったらしい。なんだかヘンテコな機械を渡して今度こそ早足に去って行った。
「…………早いよ」
ポツリと残されたレッドの掠れた声がボクの耳を揺らした。

特別な人

(アイツの前には初めてのレッドが沢山いた。)


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オチ全く考えてなかったぜ!どうしてもグリーンがバイビーグリーンになってくれません。


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