山も随分進んだころ、レッドの前になんだかだっさい服装の男が立ちはだかった。ボクがパチリと一瞬電気を弾かせるとそいつは一瞬ビクついてから子供は家に帰れなんて言ってきた。人間の言葉はあまりきっちりと理解できるというわけではないけれどその口調がボクをイラつかせた。
「勝負…?」
けれどレッドはさほど気にも留めなかったようで、そいつの腰のボールを見て、一言尋ねた。そいつはニヤリと嘲笑ってみせてからズバットを出した。レッドもそれに続いて腰に手を伸ばしたけれど、ホルダーからボールが外れる前にボクはレッドの肩から飛び降りた。後ろを振り向くとちょっぴり呆れたように笑ったレッドと目があった。(それでも赤は煌めいた)

「っくそ!どういうことだよ!」
吐き捨てて、いや怒鳴り散らして、理不尽にレッドを睨み付けるそいつ。淀んだその目は輝く赤とは対極に思えた。ボクの頬が再び電流を帯びたのを察してか、フシギダネがボクを呼んだ。(呼んでくれていなければボクは多分そいつに一発かましてやっていただろう)渋々引き返してフシギダネの横につくと、レッドは既に横にあった岩の影にいた。トレーナーが傍にいないのはごく稀に都合がいい。ボクと、もちろんフシギダネもがそいつに向かって威嚇する。ボクの静電気の弾ける音とフシギダネのツルの音に「ひいっ…!」なんていかにもな声を上げた先程までレッドを見下していたそいつは倒れているアーボをボールにいそいそと戻して足早に逃げ去った。

「あれ?さっきの人は?」
岩陰から戻ってきたプレートを持ったレッドはそう聞いた。(後で聞いた話、わざましんってやつらしい。ボクらに技の出し方を教えてくれるめもりーみたいなものだ。)ボクが知らない、って意味をこめて可愛く一鳴きして元の場所、レッドの肩によじ登ると、「そっか」とたいした興味もなくそう言って、レッドの足は再び前へ踏み出した。

それは後にレッドが“敵”と見なす奴らとの、最初の出会いだった。

真っ黒な男


-----------------------R団とのファーストコンタクトの話。


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