ボクはピカチュウ、といった。それはどこかの人間が付けた、ボクら一族を指す総称なんだとだれかが言っていた。森の中を行くトレーナーがボクを見て「ピカチュウだ!」なんて叫ぶことはよくあることだった。ボクらがあまり人前に出ないせいもあると、これもどっかのだれかが言っていた。ボクらはさしてその付けられた言葉の並びに感情を抱くこともなく、人間が発するこの言葉がボクらを指すというその事実だけを知っていた。
「ピカチュウ、」
後ろからその単語が聞こえた。ただ、これは、違う。後ろを勢いよく振り返ったら、思ったとおりの、
(レッドっ!)
ボクが呼んだその名前はピカ、と鳴き声に変わっただけだったけどレッドにはちゃんと伝わったらしくて、ふわっと笑ってくれた。
「ピカチュウ、どうしたの?」
たった五文字の単語なのに、聞きなれたそれのはずなのに、どうしてだろう…レッドが呼ぶそれだけは特別な言葉みたいで、ボクの、ボクだけの、名前。
(チャアー)
「変なの、ピカチュウ」

ボクの名前

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私はニックネームは付けない派です。


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