その日は、夜遅くまでこそこそと物音がしていたの。あの子でも寝られないなんてことがあるのね、なんて少し微笑ましく思いながら、私はそっと目を閉じた。
「お母さん、おはよう」
「おはようレッド、早いわね」
翌日も普段なら私が起こすかお腹が空くか、グリーンくんが呼びに来てくれるまで布団にくるまっているレッドが早々と起きてきていて、すっかり準備万端といった様子でトーストにかじりついていた。
「レッド、忘れ物はない?」
「…多分、大丈夫」
「そう…気をつけてね」
それほど多くない会話を交わしながら、レッドはペロリと朝食をたいらげて二階にあがる。
「レッド、パソコン見ておいて?傷薬が入ってるわ」
「うん」
階段を上がっていくあの子を眺めながら大きくなったのね、なんて改めて感慨に耽ってみたりして、
「お母さん」
「…もう行くの?」
「うん、グリーンの部屋、電気が消えたから」
「そう…頑張ってね」
買ったばかりのリュックを背負って、帽子を被って、玄関のドアノブに手をかけたあの子の後ろ姿があの人と重なって、これは運命だったのねと変に納得してしまったりして。

「お母さん…―ありがとう」

旅立ちの朝

(ドアが閉まる音と共に溢れ出た涙)(あなたの成長が、とても、とても嬉しかったのよ)


-----------------------
どんな思いで送り出したのかなんて、私には到底わからないんだろうなーとは思うんだけど。


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -