き風に夢と散るらむ




時は戦国夢物語。



年端もいかぬ幼き少女。

本家の青年に恋をする。



その青年。


容姿端麗才色兼備。

次期頭首とまで謳われる。




恋は深まり。


少女が青年を一筋に想えば。

青年はそれを節に受け止めて。


何時しか互いに想い合うようになっていった。




時は流れ。


戦に敗れ。
若き青年頭首の座に就く。


その政の素晴らしさ。

噂となり国中に響き渡る。



他の武将。
青年の才を恐れ。

芽も出ぬうちに抑えにかかる。



『若き女子を私のもとへ』



先代の負け戦の代償として。

人質を差し出せと要求す。



悩む青年。

目前には想い合う一人の少女。




「ただ秋の稲穂の如く頭を垂れましょう」



そう云って。

少女は静かに微笑んだ。



その悲しげな少女の姿に。

青年は痛みを堪えきれなくなって。


そっと少女を抱き寄せる。




「好いた殿御の為に御座います」



その声は泣いているのか笑っているのか。


そんな少女に。

青年はただ謝る事しか出来ず。




「ならば殿。私の為に天下をお取り下さい」




それは凛と瞬いて。

瞳には強くも優しげな光。


その聡明な光は。

何にも汚される事無く悠然と其処に輝き続け。


そして青年を信じて待っていた。




悟った青年。


涙を飲んで。

一層強く抱き寄せる。





「天下を取って。必ずや貴方様を迎えに来よう」




─其れまでは

夢でお逢い致すのを楽しみに─…





涙と共に。

少女の頭がこくりと揺れた。





†end

Poem

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