自涜と背徳
酷く胸が高鳴る。
吐きそうなくらいの目眩。
荒い呼吸に飲まれながら。
ただ快楽に溺れた。
「‥‥っん‥‥ゃ、あ‥っ」
不自然に潰した高い声が、階段下の倉庫に響く。
埃臭い、すえた臭いのするその場所に、ジャージを着た生徒が2人。
何か探すわけでも、取りに来たわけでもなく。ただ敷かれたマットの上で不自然に音を響かせている。
「あまり声を出すと、外に聞こえますよ?」
「…っ!‥‥んぅ…っ」
声を響かせていた生徒が、サッと顔を青くして唇を噛む。
その後ろから甘く耳を噛まれて、ビクリと肩を震わせた。
「‥っ、お願い、日吉く‥っ、も‥‥やめ、て‥っ」
「まだです」
自身を包んだ手が上下に擦れ、その度に荒い呼吸を繰り返す。
後ろ手に回された両腕は擦っている者によって拘束され。身体も力をなくしたように相手の胸元に寄り掛かっている。
薄暗い倉庫の中で、視界がチカチカと光る。
粘着質な湿った音と。
熱に魘された口内。
何故こんなことになったのか。
考えたくても与えられる刺激に邪魔をされる。
「千石さんが悪いんです」
自分の肩に頭を置いて、天井を仰ぎながら声を漏らす千石を横目で見つめる。
今にもとろけそうな、高揚した表情。
口端に垂れる唾液はどちらのものか。
こうさせているのは自分だと思うと。妙な優越感で自分の息まで上がってきそう。
「ひよ‥ッ‥‥んんっ」
自分の名前を繰り返す五月蝿い口を、己の唇で強引に塞ぐ。
歯の裏、上顎、頬の内側。
普段他人に触れられることのない場所を、舌先で蹂躙していく。
「──は、ぁ‥っ!‥‥だめっ、もう、イっちゃ…ッ」
「良いですよ。俺に見られながら、イって下さい」
「あっ、やぁ‥っ!あ、あ、あッ‥‥‥‥!!」
一層身体を仰け反らせて、腹部を締めながら無音で声を発する。
ビクビクと震える先端からは濃密な汁が溢れ出し、握っていた手のひらで押さえ込む。
べとり、と。
熱を持ちながら糸を引く。
独特な匂いがするそれを指先で弄りながら、徐に口に運ぶ。
指先の間まで丁寧に舐めとれば。それを見ていた千石が息を飲んで目を反らした。
「…続きは、また3人でしましょう」
腕の拘束を解いて身体をどければ、支えをなくした千石がマットの上に倒れ込む。
整わない呼吸に苦しそうに顔を歪めながら。現のように言葉を溢す。
「なんで‥‥、なんでこんなこと‥‥」
「…貴方が、悪いんですよ」
見下ろしながら、同じ言葉を繰り返す。
少し下がった、悩まし気な眉。
涙が溜まり、焦点が合わない瞳。
唾液で濡れた、艶かしい唇。
もぞりと擦れる内腿を、日吉は見逃さない。
──そんなに気持ち悦さそうに魅せる、貴方が悪いんだ。
†end
庭球BL